クラシックの曲がアニメや映画に使われることは珍しくはありません。
バーバーの「弦楽のためのアダージョ」なんてのはよく使われますし、映画「地獄の黙示録」ではワーグナーが使われていました。
BGMをクラシックで統一したアニメなんてのもありましたね。
このシューマンのピアノ協奏曲は、「シャイン」(1996)、「僕のピアノコンチェルト」(2006)、「4分間のピアニスト」(2006)、邦画では「わが愛の譜 滝廉太郎物語」(1993)あたりで使われています。シューマンらしい劇的な音楽は映画を気持ちよく盛り上げてくれます。
「ウルトラセブン」では、最終話でダン・モロボシ(ウルトラセブンが扮した地球人)が自らの正体を告白したシーンに始まり、怪獣との戦いと、ウルトラセブンが役割を終えウルトラの星へと還っていくまでのシーンを通じて、第1楽章が作品のほとんどのBGMとなっています。
なんでそんなに話題になるのかとためしに見てみましたが、確かに見事にマッチしている作品ではないかと思ったりしました。
L.v.B.ではあまりロマン派の作品を取り上げてこなかったせいなのか、シューマンの劇的な展開がとても新鮮です。
モーツァルトやベートーヴェンのような形式的な美しさを持つわけではなく、情緒に訴えかける音楽性に、アマチュアにもシューマン好きは結構います。
ただ、よく言われるようにオーケストレーションについてはやや難があり、オーケストラ曲だけではなく室内楽を演奏してみても、「なぜこの調なのだろうか」「なぜこの音なのだろうか」とはしばし悩まされます。
ピアノをメインとしている作曲家だからなのでしょうか?
そして管弦楽技法に加えてこの曲のチャームポイント(?)に、「ヘミオラ」の技法が使われていることが挙げられます。
ヘミオラとは、「3拍子の曲で、2小節をまとめてそれを3つの拍に分け、大きな3拍子のようにすること」(Wikipedia)だそうです。・・・よくわかりませんね
3楽章は基本的に3拍子です。
当然1・2・3の3拍で1小節をカウントします。
しかし、ここに拍子の異なる音楽が書かれているのです。
ちょっとわかりにくいですが・・・聞いている人にはこう聞こえます。
「タン・タン・タッタ タン・タン・タッタ」ところが譜面には、
と書かれています。「タン・タン ・タッタ タン・タン ・タッタ」
なんのこっちゃ・・・と思われるかもしれませんが、目から入ってくる情報と、耳から入ってくる情報とが異なるので、演奏者はとても混乱します。
たとえば、三拍子は三角形を形作って指揮をします。二拍子は往復です。
理屈の上では、これは同じだけのカウントをします
三拍子を二回→1・2・3・1・2・3指揮者のように腕を振ってみると、簡単にできます。
二拍子を三回→1・2・1・2・1・2
でも、右手で三拍子、左手で二拍子を同時にやるのは結構難しいです。
シューマンは、別に演奏家にそんな曲芸を求めていたわけではなく、拍子の異なる音楽をわざわざ書くことによる、不安定さ・不自然さを書いていたわけです。
演奏する側にとっては、生理現象に逆らうので、遊園地にあるマジックハウスみたいな感覚です。
きっと多くの演奏家が泣かされてきた曲ではないでしょうか・・・。