2019/10/26

W.A.モーツァルト/《劇場支配人》序曲 K.486

オケの人間がオペラを演奏してみよう、と思うとなかなか大変なのが歌い手の数や曲の時間だろう。例えば同時期に作曲された「フィガロの結婚」では、演奏時間がだいたい3時間、出演者は11人、それにちょっとだけ合唱もある。

編成の小さな曲だと、プーランクの「人間の声」などはソプラノひとりで40分ほど、などもあるのだがやっぱりモーツァルトの作品を、と思うと候補になるのがこの「劇場支配人」だろう。

正確には「音楽付きの劇」なので音楽のない場面もあるのだがオペラとして演奏するときは序曲と4つの歌曲、登場人物も4名、演奏は30分ほど。ついでに作曲期間も2週間ほどと実にお手軽である。中身は「フィガロ」「ドン・ジョヴァンニ」にも劣らないモーツァルト中期の序曲にザ・モーツァルトな歌曲なので取り上げやすい・・・と思いきや中途半端なのかほとんど演奏される機会のないのが実情だろう。

そもそも作曲の背景がフランツ2世が妹夫婦歓迎のための祝宴でサリエリとモーツァルトにそれぞれ依頼し御前で上演させた作品であって、演奏会のためのというわけでもないのでその後演奏する機会もなかったということのようだ。
とはいえ音楽だけを見れば見事なモーツァルトの作品だけ、なんとももったいない、と思ってしまう。

ストーリーは喜劇なのでなんということもなく、要するに新たな劇団立ち上げに際してオーディションを開催したところマダム・ヘルツとシルバークラングのふたりがお互いに自分がプリマドンナだと喧嘩し、最後は芸術論について全員で語る、というだけのものだが、台本は「後宮からの逃走」でも担当したヨハン・ゴットフリート・シュテファニーによる。短期間での依頼とは言え4年前の作品を超えるまでには至らなかったようだ。

この曲の演奏会
・第29回演奏会(全曲)
・第44回演奏会(序曲)