2014/10/13

L.v.ベートーヴェン/交響曲第6番へ長調《田園》 作品68

9つの交響曲の中でもちょっと異色な作品がこの《田園》ではないでしょうか。
ハイドンやモーツァルトにもタイトルをもつ交響曲はありますが、具体的な情景描写をした最初の作品・・・と言われています。

もしベートーヴェンがこの作品により標題音楽の世界を開拓しなければ、ベルリオーズの幻想交響曲、リストの交響詩、リヒャルト・シュトラウスのアルプス交響曲なども生まれなかった、かもしれないほどインパクトのある作品だと思います
この曲の特徴としては各楽章にはベートーヴェンが標題をつけています。
1.「田舎に到着したときの愉快な感情の目覚め」
2.「小川のほとりの情景」
3.「田舎の人々の楽しい集い」
4.「雷雨、嵐」
5.「牧歌 嵐の後の喜ばしい感謝の気持ち」

「田園風景」というと個人的にはやはり水田が広がる風景ですが、ベートーヴェンが書いた標題は具体的などこかの風景ではなくベートーヴェンが考える情景を描いたもの、であるそうです。
ウィーンにはベートーヴェンがよく散歩をした「ベートーヴェン小径」なるところがあり、流れる小川は2楽章のイメージにもあうそうですが、都内近郊だと・・・玉川上水や等々力渓谷をイメージしています。

宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」には「第六交響曲」がでてきます。
 ゴーシュは町の活動写真館でセロを弾くかかりでした。けれどもあんまりじょうずでないという評判でした。じょうずでないどころではなくじつはなかまの楽手の中ではいちばんへたでしたから、いつでも楽長にいじめられるのでした。
 ひるすぎみんなは楽屋にまるくならんでこんどの町の音楽会へ出す第六交響曲の練習をしていました。
この曲が実は田園だということで、作中のキーワードから推理されています。高畑勲さんが監督をしたアニメーションでは実際にNHK交響楽団の演奏が使われていていました。

「セロ弾きのゴーシュ」を読み返す機会があれば、田園をBGMにしてみるのも面白そうですね。

■参考
金聖響/「ベートーヴェンの交響曲」講談社 2007