L.v.B.では最近フランス音楽を取り上げることが多いようです。
このディーリアスもフランス音楽かと思われるかもしれませんが、イギリスの音楽家です。もっともドイツ系のディーリアスはアメリカで商売をして、ドイツで音楽を学んで、フランスに居を構えていました。
代表作は何度か演奏している「小管弦楽のための2つの小品」(前回の演奏会のアンコールでもありました)やチェロ協奏曲などでしょうか。
楽譜がなかなか入手できなかったり、ドビュッシーやラヴェルのような華やかさもベートーヴェンの力強さもなく、それほど知名度はないかもしれません。
しかし、ワグネリアンならぬディーリアンなどと呼ばれる愛好家がいるようで、何度か耳にしているといつしか口ずさんでしまうような親しみのある音楽だと思います。
どこか懐かしい田舎の風景が思い起こされ、人生の幸せをかみしめる曲が多く、好きな作曲家です。
この「2つの水彩画」は特定の絵画をモティーフにしているわけではありませんので、音楽に身を浸しながら思い思いの絵を描いていただければよいな、と思う作品です。
といっても2曲合わせて5分もない作品ですので頭の中で下書きをする頃には終わってしまう、なんとも罪深い曲ではないでしょうか。
さて、第26回演奏会ではドビュッシーやフォーレ(の原作のメーテルリンク)とともに記念年として取り上げています。
ドビュッシーやフォーレは意外と女性関係は自慢できるようなものではなく、ドビュッシーに至っては友人の妻を寝取って駆け落ちまでしています。
フォーレも禁欲的な音楽を書きながら愛人を囲っていたとか。
一方ディーリアスは41歳と晩婚でしたが、50歳を手前に失明・全身麻痺に侵されながらも妻・ジェルカや弟子のフェンビー、指揮者のビーチャム(ロ
ンドン・フィルやロイヤル・フィルの創設者であり、ラジオから流れるビーチャムの指揮にはディーリアスはいつも満足したとか)に支えられ作曲活動を続けた
のでした。
ジェルカは最後までディーリアスに付き添い、ディーリアスが死去した1年後に後を追うように息を引き取ったとのことです。
若いころには音楽の道に進むこともできず、病にも苦しんだディーリアスですが、残された音楽からは幸せな人生であったと伝わってくるようです。
そんな音楽が演奏できたらな、と願っています。