「楽劇王」とも呼ばれるワーグナーの作品の中で、異色の作品とも言えるのがこの「ジークフリート牧歌」ではないでしょうか。
ワーグナーはやはり「トリスタンとイゾルデ」「ローエングリン」など大編成、長時間の作品が有名で、室内楽曲はそれほど多くは作曲されておらず、そして演奏頻度の多い曲となるとこの「ジークフリート牧歌」ぐらいだと思います。
作曲の経緯もよく知られています。
妻であるコジマの誕生日のために作曲され、誕生日の朝、自宅に集まった楽団員が階段に並んで演奏したとか。
タイトルにある「ジークフリート」は前年に生まれた二人の息子のことであるが、楽劇の「ジークフリート」にも牧歌の主題が用いられているそうです。
ワーグナーは最初ベートヴェンの後継者たることを目指したと言われます。
ブラームスの交響曲第1番が「ベートーヴェンの第10番」と評された話がよく知られている一方で、ワーグナーもベートーヴェンを尊敬し交響曲作曲をしました。
ワーグナーは「第9」の構想、歌と管弦楽の融合、メッセージ性に強く共感したようで、10代の頃にいくつかの交響曲を作曲しています(1曲をのぞき未完成)。しかしベートーヴェンの後に書くべき曲は交響曲ではないと悟り楽劇の世界を切り開いて行きます。
ベートーヴェンの後継者としてはブラームスを推す方が多いようですが、個人的には「第9」の世界を継いだのはワーグナーだと思いますので、L.v.B.でも積極的に取り上げて行きたいのですが・・・なかなか室内管弦楽団のレパートリーにはならないのが難しいですね。