2019/07/15

F.クライスラー / ベートーヴェンの主題によるロンディーノ・L.v.ベートーヴェン / ロンド ト長調 WoO.41

オーストリア出身のヴァイオリニスト、フリッツ・クライスラーは幼少より「神童」呼ばれ、一時は医学を学んだり陸軍でも昇進するなどの意外な面もあったりする。
活動の場はヨーロッパからアメリカに移り、ハリエット・リースと結婚すると彼女の敏腕マネージャとしての支えが音楽家としての大成の一因ともなったらしい。
演奏だけではなく作曲家としてもいくつかの作品を残しており、「愛の喜び」「中国の太鼓」などはヴァイオリン教室の発表会でのレパートリーとしても親しまれている。

作曲した曲には●●の様式(主題)と名付けられてものが残されており、のちにこれらの作品はクライスラーのオリジナルであることが公表された。
当時はそれなりに騒動になったようだが、現代でもそのままのタイトルで演奏されている。クライスラーは旅行先で発掘・発見した知られていない曲を取り上げたり、先達の様式とした作品により古典作品への関心がおきたりと賛否あるエピソードだ。

そんな中、この「ベートーヴェンの主題によるロンディーノ」は実際に編曲元となる作品がある。
何曲かあるベートーヴェンの「ロンド」のうち、その中でもっとも知名度がないであろうWoO.41がそれにあたる(WoOとはWerke ohne Opuszahl=Works without Opus number、つまり作品番号のない作品の意味)。
原曲はどちらかと言えばピアノの比重が高い作品であるが、確かに同じ主題をもつ曲であることはすぐにわかる。
作曲が1792年であるからハイドンに弟子入りをしたころ、Opus付きの作品であればOpus1となるピアノ三重奏などと同時期にあたるが作曲の背景などの情報はあまりない作品で、おそらくは習作として残した作品と思われる。

クライスラーが発見(採用?)しなければもっと知られることのなかったであろう作品であるが、きっとこうした作品を重ね1798年にはヴァイオリン・ソナタ第1番Op12へとつながったのかと若きベートーヴェンの姿を思い浮かべてみるのは悪くない小品だ。