モーツァルトは作曲家としてだけではなく演奏家としても名声を得ており、古くは映画「アマデウス」で即興演奏をするシーンを思い浮かべる人もいるだろう。
収入のためもあるだろうが教師としても活動し後に台頭するピアノ奏者としてのベートーヴェンとモーツァルトの弟子たちが火花を散らした・・・などという話もあるようだ。
第17番は第14番と共にそんな弟子のひとりであるバルバラ・フォン・プライヤーのために作曲された。
この時期のピアノ協奏曲は中期に分類されるが、注目するべきは管楽器の使い方だろう。
それまでの作品はオーボエやホルンは弦楽器に重ねハーモニーや音色を強調するために使われていたのだが、ついに(管楽器奏者には待望だろう)弦楽器とは独立した楽器群として活躍をする。貴族のサロンで演奏していた時代から、演奏会としてより華やかな、交響的な作品が求められる背景があるだろう。
そんな経緯があるためか、のちの「戴冠式」(K.537)よりもこの時期の作品は通好みのようで、特にこの第17番をモーツァルトの最高傑作とする人もいるようだ。
第1楽章:Allegro
奇をてらわず一音の無駄もないソナタ形式の楽章はモーツァルトにしか残せない世界が広がる。のちにベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番ト長調はこの曲を手本にしたとか。
2楽章:Andante
ピアノの優雅な歌はショパンの音楽を先取りするような美しさであり、そして管楽器の美しい歌が聴きどころ。後にメシアンは「モーツァルトの名を不滅のものにする」と讃えた。
第3楽章:Allegretto - Presto
オペラの一幕のような軽快な楽章は当時モーツァルト家に仲間入りしたムクドリにインスピレーションを受けたとの話も面白い(3年程飼ったそのムクドリに追悼曲を残した)。モーツァルトの作品の終楽章はロンド楽章が定番なのだが、これは変奏曲風に進行し、最後の長いコーダはまるでパレードのような華やかさでさぞかし演奏会を盛り上げたことだろう。