2015/01/08

モーツァルト/クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581


この曲は、モーツァルトの親友のクラリネット奏者で当代随一の名手であったアントン・シュタットラーのために作曲されました。モーツァルトの死の2年前の1789年に作曲されており、円熟期の作品といえますが、最晩年のクラリネット協奏曲とは異なり、死の影を感じさせるような独特の雰囲気はあまりなく、優美で明るく、甘味な作品となっています。

 クラリネットは音域により音色が異なる特徴をもっていて、大きく分けると低音部(シャリュモー音域)はややくすんだ深みと翳りのある音、高音部(クラリオン音域)は艶やかで明るい音となっています。この曲では両者を効果的に対比させ、クラリネットの音色を聴く人に深く印象づけています。特に低音域はシュタットラーが特に好み、わざわざ通常よりも低い音の出る楽器を特注して使うほどだったらしく、モーツァルトはこの曲で低音部の深々とした響きを随所にとりいれています。


第1楽章はソナタ形式、第2楽章は3部形式で、甘味な旋律が印象的、3楽章はメヌエットと2つのトリオからなり、4楽章はアレグレットの快活な主題が様々な表情に変奏されます。