2015/12/05

山形明朗(ピアノ)

山形明朗 Akira Yamagata

東京藝術大学大学院音楽研究科器楽専攻(ピアノ)修了。

在学中より石川ミュージックアカデミー、Kors Muzyczny in Bialystokに参加(ディプロマ取得)、また、静岡音楽館AOI主催2006年度ピアノ伴奏法講座にて野平一郎氏に師事するなどの研鑚を積む。

第12回宝塚ベガ音楽コンクールピアノ部門第一位、同時に特別賞受賞。

これまでにソリストとして、モーツァルト、ベートーヴェン、チャイコフスキー、ラフマニノフなどのピアノ協奏曲を各地のオーケストラと共演。2013年3月にはルーマニア国立コンスタンツァ歌劇場オーケストラに招聘され、ラフマニノフピアノ協奏曲第2番を共演しヨーロッパデビューを果たした。

アンサンブル・ピアニストとしても、「JTが育てるアンサンブルシリーズ」、「東京藝術大学シューマン・プロジェクト」などに出演、主に声楽家・弦楽器奏者のパートナーとして、国内外で活発な演奏活動を繰り広げている。また、バリトン歌手としてはルネサンスから古典派までを中心に、宗教曲のソロを含めたアンサンブル活動を続けている。モーツァルトアカデミートウキョウ、仙台コレギウムムジクム、各メンバー。

新潟県上越市出身。

2015/12/03

J.M.ウェーバー / 七重奏曲『我が生涯より』ホ長調

まず「我が生涯より」という曲を思い浮かべると、まず出てくるのは“ベドジフ・スメタナ”の弦楽四重奏曲という方が大半かと思われます。 ですが今回演奏しますのは、“ヨゼフ・ミロスラフ・ウェーバー (以下、J.M.ウェーバー) ”が作曲した弦楽器と管楽器混合の七重奏曲です。
そこでさらに思うこと、それは「ウェーバーって、あの魔弾の射手で有名なウェーバーさん…でもないの!?」ということではないでしょうか?
そうなのです、ウェーバーはウェーバーでもこのJ.M.ウェーバーは、1854年から1906年に生きたチェコのヴァイオリニストで、この「我が生涯より」以外には弦楽四重奏曲とヴァイオリン協奏曲を作曲している、ということ以外に全く情報がない、いわゆる「超マイナー作曲家」に分類されるのでは…?というくらいの隠れた作曲家であります。

そんなJ.M.ウェーバーが作曲した「我が生涯より」は、チェコらしい曲調にボヘミアの風を感じるような、以下の表題付きの四つの楽章から構成されています。

チェロのアルペジオとホルンのメロディが川の流れを彷彿とさせる、ゆったりとした曲調の第一楽章、“モルダウの岸辺から、青春の夢(おだやかなテンポで) ” 
ヴァイオリンの快活なメロディがこれからの人生への明るい希望を抱かせる第二楽章、“学生時代;人生の理想(スケルツォ) ” クラリネットからファゴットへ続くのもの哀しげな動機、そして最愛の人を失った悲痛をヴァイオリンが歌い上げ、「いつまでも悲しんではいられない、いや、でも愛するお前がいなくて僕は絶望しているのだよ…しかし、前を向いて歩かなくては!」という心の葛藤を表すような第三楽章“愛する人の墓で(アダージョ・マ・ノン・トロッポ) ”
社会の荒波で戦っているかのようなビオラの勇ましいメロディ、一旦その状況から落ち着くかのように奏でられるコラール、そんな希望を打ち砕くかのようにまた冒頭のメロディが出てきて、そして思考が止まり、昔のことを思い出すかのように第一楽章の旋律が蘇り、その人生が終わるかのように静かに収束していく第四楽章“生存競争の中で;欺かれた希望;青春時代の思い出(フィナーレ) ” 

今回この曲を演奏いたしますメンバーは、全員が1980年代生まれという当団でも比較的?若手のメンバーで構成されています。 これから待ち受ける人生がどうなっていくかは全くわからないし、まだ自分の人生を語れるほど大人にはなりきれていない…しかし、自分たちの「今」、そしてそれぞれの抱く「未来」への思いを存分に表現して演奏いたします。 残念ながらあまり日の目を浴びられていない曲ではありますが(何故この編成にホルンが2本なのか、というのも疑問ではありますが)、往年の名曲に負けないくらいの素敵なメロディ溢れる曲ですので、最後まで楽しんでお聴きいただければ幸いです。

2015/11/29

演奏会履歴(第26~30回)

第26回演奏会
<<ドビュッシー・ディーリアス・メーテルリンク生誕150周年>>
2012年9月2日(日)
 府中の森芸術劇場 ウィーンホール 指揮:広井 隆

 G.U.フォーレ/「ペレアスとメリザンド」 作品80
 F.T.A.ディーリアス/「2つの水彩画」
 C.A.ドビュッシー/「フランソワ・ヴィヨンの詩による3つのバラード」
 L.v.ベートーヴェン/交響曲第7番 イ長調 作品92
 E.A.Lサティ(C.A.ドビュッシー編曲)/ジムノペディ第1番(アンコール)

第27回演奏会
2013年1月27日(日)
 五反田文化センター 音楽ホール 指揮:苫米地 英一

 S.ブリテン/聖エドモンズバリーのためのファンファーレ
 G.H.ヘンデル/水上の音楽第2組曲 ニ長調 HWV349
 W.A.モーツァルト/交響曲第40番 ト短調 K.550
 L.v.ベートーヴェン/ロンディーノ
 J.ブラームス/セレナード第2番 イ長調 作品16
 J.シュトラウス/ピチカート・ポルカ(アンコール)
第28回演奏会
2013年3月24日(日)
 府中の森芸術劇場 ウィーンホール 指揮:広井 隆

 J.M.ラヴェル/クープランの墓
 C.C.サン=サーンス/チェロ協奏曲第1番イ短調作品33(独奏:印田 陽介)
 L.v.ベートーヴェン/交響曲第4番変ロ長調作品60
 G.U.フォーレ/マスクとベルガマスクよりメヌエット(アンコール)
第29回演奏会
2013年9月23日(月)
 府中の森芸術劇場 ウィーンホール 指揮:広井 隆

 J.ブラームス/ハイドンの主題による変奏曲 作品56a
 W.A.モーツァルト/歌劇「劇場支配人」 K.486
  ソプラノ: 田子 雅代(マダム・ヘルツ)
  ソプラノ: 和田 友紀菜(マドモワゼル・ジルバークラング)
  テノール: 田口 昌範(ムッシュ・フォーゲルザンク)
  バリトン: 岩崎 恭男(ブッフ)
 L.v.ベートーヴェン/交響曲第2番 ニ長調 作品36
 G.フォーレ/ドリーより「ミ・ア・ウ」(アンコール)

第30回演奏会   
2014年3月2日(日)
 府中の森芸術劇場 ウィーンホール 指揮:広井 隆

 J.M.ラヴェル/バレエ「ジャンヌの扇」よりファンファーレ
 L.v.ベートーヴェン/交響曲第6番へ長調<<田園>> 作品68
 J.ブラームス/交響曲第4番ホ短調 作品98
 J.ブラームス/ハンガリー舞曲第1番(アンコール)

2015/11/15

S.バーバー/弦楽のためのアダージョ Op.11

厳かな祈りの音楽、中間部のドラマティックな音楽、嘆きのうちに収束する結末と、10分ほどの小品ながらアマチュア・プロを問わず人気のあるこの曲は、イギリスの作曲家サミュエル・バーバーが元々は弦楽四重奏として作曲した曲を弦楽合奏に編曲したものです。

通称「バーバーのアダージョ」とも呼ばれますが、クラシックにあまり馴染みのない人でも、オリバー・ストーンがベトナム戦争を描いた映画『プラトーン』やJ.F.ケネディの葬儀、N響による昭和天皇の追悼演奏会を始め、映画やドラマで耳にされたことがあるのではないでしょうか。

曲は静かなハーモニーに始まります。
前半は救いを求めるかのように音が上昇をしようとする単調な音型が続きますが、なかなか果たすことができないまま、各パートを巡っていきます。
やがて中間部で低弦から高弦にむかってオクターブの跳躍を繰り返し、その祈りを届けようと曲はドラマティックな盛り上がりを見せます(このあたりは各パート音が高くなり、難しくなってくるところです)。
しかし その願いは果たされず、全休止(オーケストラ全体が止まってしまうこと)の後3回の嘆きの旋律が繰り返され再び全休止を迎えます。
そして冒頭のフレーズが再開されますが、最後には力尽き収束を迎えます。

バーバー自身は葬儀や追悼の場面で演奏されることが多いことに納得できなかったそうですが、ベートーヴェンの交響曲第3番・第7番の第2楽章やバッハのアリア(管弦楽組曲第3番の1曲)と並び、人の心に染みる音楽であることは確かです。

2015/11/10

J.ブラームス/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77

ヴァイオリン協奏曲の王様と言えばやはりベートーヴェンです。
そしてメンデルスゾーンとこのブラームスをあわせた3曲が「3大協奏曲」またはチャイコフスキーを含めて「4大協奏曲」とこのジャンルの最高峰の1曲でしょう。


なかでもブラームスの協奏曲は演奏難易度が格段に上がります。
ハイポジションや重音奏法の連続、オーケストラとの複雑な絡み合い・・・ブラームスの綿密な作り込みがあり、「ソリストとオーケストラ」ではなく独奏楽器すら1つのパートにすぎないような
交響的な曲に仕上がっています。

作曲されたのは1878年、ブラームスが45歳の時です。
すべてにおいて慎重なブラームスの作品では1877年に交響曲第2番作品73、続く作品78にはヴァイオリンソナタの「雨の歌」、作品80「大学祝典序曲」、作品81「悲劇的序曲」と言った脂ののった時期の作品と言えます。

作曲された経緯は諸説ありますが、親友ヨアヒムの演奏するベートーヴェンの協奏曲に感銘を受けたと言われています。そしてイタリア旅行の間に親友の助言を受け(しかしすべては受け入れずに)完成されたのがこのヴァイオリン協奏曲です。

初演もヨアヒムの独奏、ブラームスの指揮によって行われ、大変好評だったようです。
全体の半分近くを占める第1楽章はどこか牧歌的な雰囲気に始まり、様々なテーマがオーケストラによって提示され、独奏とオーケストラが変形させていくブラームスらしい楽章です。
 第2楽章は一転オーボエの美しい旋律が続き、サラサーテなどはこのオーボエのソロを聴きながら待っているのが悔しく演奏しなかったという逸話が残っているほどです。当初は4楽章の構成がありましたが、中間の2曲を廃棄してこの第2楽章が作曲されたと言われています。
最後の第3楽章はジプシー風のロンドで、楽しげなお祭り騒ぎの1曲です(ブラームスがここまではっちゃけるのも珍しい?)。最後はトルコ行進曲のような曲に変わり、楽しかった夢の時間が終わるように締めくくられます。

同じ年にチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲が作曲されていますが、チャイコフスキーはブラームスの曲を「詩情が欠ける」と評したそうです。
チャイコフスキーの譜面はユニゾン(複数の楽器が同じ旋律を同時に演奏すること)が多く、シンプルではありますが美しい旋律に満ちています。ブラームスはその対極で、計算し、練りに練られた構成、1つの主題をこれでもかと使い回すところがチャイコフスキーが辛口になるところでしょう。

ブラームスは決してワーグナーやリストのように新しいジャンルを開拓したわけではなく、しかしながらこのややこしさがまた魅力なのだ、と年を取るに連れて味わいが深く感じられる作曲家ではないでしょうか。