2015/11/15

S.バーバー/弦楽のためのアダージョ Op.11

厳かな祈りの音楽、中間部のドラマティックな音楽、嘆きのうちに収束する結末と、10分ほどの小品ながらアマチュア・プロを問わず人気のあるこの曲は、イギリスの作曲家サミュエル・バーバーが元々は弦楽四重奏として作曲した曲を弦楽合奏に編曲したものです。

通称「バーバーのアダージョ」とも呼ばれますが、クラシックにあまり馴染みのない人でも、オリバー・ストーンがベトナム戦争を描いた映画『プラトーン』やJ.F.ケネディの葬儀、N響による昭和天皇の追悼演奏会を始め、映画やドラマで耳にされたことがあるのではないでしょうか。

曲は静かなハーモニーに始まります。
前半は救いを求めるかのように音が上昇をしようとする単調な音型が続きますが、なかなか果たすことができないまま、各パートを巡っていきます。
やがて中間部で低弦から高弦にむかってオクターブの跳躍を繰り返し、その祈りを届けようと曲はドラマティックな盛り上がりを見せます(このあたりは各パート音が高くなり、難しくなってくるところです)。
しかし その願いは果たされず、全休止(オーケストラ全体が止まってしまうこと)の後3回の嘆きの旋律が繰り返され再び全休止を迎えます。
そして冒頭のフレーズが再開されますが、最後には力尽き収束を迎えます。

バーバー自身は葬儀や追悼の場面で演奏されることが多いことに納得できなかったそうですが、ベートーヴェンの交響曲第3番・第7番の第2楽章やバッハのアリア(管弦楽組曲第3番の1曲)と並び、人の心に染みる音楽であることは確かです。