花形といえばやはりバイオリン協奏曲で、ベートーヴェン・ブラームス・チャイコフスキー、それにメンデルスゾーンを加えた四大協奏曲やヴィヴァルディの「四季」などは毎日世界中で演奏されている曲目だろう。
続くのはピアノ協奏曲なのだが、そのほかの楽器となるとぐっと作品数を減らし、演奏機会も少なくなる。コントラバスやチューバ、ティンパニなどは数えるほどだ。
隠れた名作は多いのだろうが、アマチュアオーケストラの選曲ではやはり「定番」に集中してしまうことになり、必然マイナーな曲はなかなか演奏機会がないということになる。
ファゴットはオーケストラでも独特の音色で多くのソロパートを受け持つ楽器だ。
低音楽器のイメージがあるが音域が広く、多様な音楽を担当することができ、「ファゴットの活躍する曲」の好みで長く語らうことができるだろう(個人的にはデュカスの「魔法使いの弟子」をおすすめ)。
協奏曲は作品数ではヴィヴァルディが30曲以上残しているのだが、ファゴット協奏曲と言えばやはりモーツァルトだ(異論あり)。
同時期の作品ではソプラノと管弦楽のための作品である「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」K.165、映画「アマデウス」で使われた交響曲第25番K.183、番号は前後するがヴァイオリン協奏曲第3番K.216・第5番「トルコ風」K.219などが作曲されている。
曲は約20分弱で、ファゴットのひょうきんなキャラクターを表すかのような主題の1楽章(ハトポッポの曲、などと呼んだりもする)に始まる。キャラクターと明るいメロディー、技巧的なパッセージと様々な魅力を引き出す楽章だ。
第2楽章はモーツァルトらしいロマンス。明るいイメージ第1楽章から、月の夜、男女の出会い、そんなイメージが届く音楽に代わる。オーケストラのヴァイオリンやオーボエとのかけあいが物語性を強調していく。
終楽章はメヌエットのロンド楽章。
一転して小さな宮廷の舞踏会のような世界に移る。1楽章の明るさ、2楽章のロマンスとの対比はモーツァルトならでは。
モーツァルトのロンド楽章はどうしてどの曲も名曲なのかとため息ばかりがでる。
ちなみにこの作品は同じく低音楽器であるチェロで演奏する試みは古今行われていたようだが、モーツァルトがあまりにファゴットの魅力を引き出したため悉く失敗したようで、アルフレート・アインシュタインからは「ファゴットのための純正なコンチェルト」との言葉が残されている。
この曲の演奏会
・室内楽演奏会vol11