モーツァルト唯一の短調セレナードである第12番「ナハトムジーク」は、自筆稿や父親に宛てたいくつかの手紙によると1782年に書かれたものだと言われています。
またバロック時代に意外に多く作られていた短調の音楽に刺激と影響を受け、それ以来モーツァルト自身も短調作品を多く書くようになったという、いわば作曲家人生のターニングポイント的な作品でもあります。
4つの楽章で構成されているこの曲は、1楽章→疾走感のあるソナタ形式 2楽章→美しい旋律の緩徐楽章 3楽章→カノンのメヌエット 4楽章→主題を伴う変奏曲形式 という、まるでひとつの交響曲といってもおかしくない構成ですが、あくまでもこちらは“セレナード”、サロンでの夜会で聴かせるような曲ですのでモーツァルト特有の軽やかさ溢れる音楽となっています。
しかし、冒頭のハ短調の悲愴的な和音(まるで某作曲家のソナタの冒頭のような…)には、さぞかし当時の聴衆も動揺したのではないでしょうか。
ただご安心を、すぐにモーツァルトらしい前向きでコミカルな音楽が繰り広げられます。どうぞ、夜会に参加した気持ちでお聴きください。
この曲の演奏会