あまり馴染みのない作曲家ですが、ロマン派以降のイタリアの作曲家としては珍しくオペラを作曲していないこと、ワーグナーの作品のイタリア初演に尽力したこと、レスピーギの師、そしてマーラーが指揮した最後の演奏会の演目のひとつ、として知られています。
時代はドヴォルザークやグリーグ、ドビュッシー、そしてマーラーといった19世紀後半から20世紀にかけて活躍した作曲家と同年代です。
作風はやや古風で、ブラームスの作品を感じさせる、とはよく評されます。
イタリアの作曲家でオペラ以外の作品を書いたとなると、古くは「四季」や「調和の霊感」で知られるヴィヴァルディ、そして近代では「イタリアのセレナーデ」のフーゴ・ヴォルフ、そしてレスピーギでしょうか。 どうしてもロッシーニやマスカーニ、ヴェルディのオペラを思い浮かべるイタリアでは器楽作曲家はあまり日の目を見なかったようです。
そのためかドイツではブラームス、ブルックナー、ワーグナー、 フランスではフォーレやドビュッシーと管弦楽法が研究される一方でイタリアではあまり進んだ研究がされていませんでした。
そんな状況に危機感を感じたのか、名ピアニストとして名を馳せながら、指揮と音楽教育の道に進んだマルトゥッチはオペラよりも器楽、管弦楽に力を入れました。
レスピーギが「鳥」「ローマ三部作」「リュートのための古風な舞曲とアリア」といった名曲を残したのはこのマルトゥッチがいたからこそ、つまりフランスにおけるフォーレやフランク、ドイツではシューマンのような役割を果たしたとも言えます。
この「夜想曲」はオペラの間奏曲としても納得出来るぐらいに情熱的でロマンティックな小品です。
夜想曲とは夜一人で思いにふけているような雰囲気を音にした作品で、ショパンの作品がその最高峰でないでしょうか。
ショパン/夜想曲第2番
これはショパンらしい美しい作品ですが、マルトゥッチはそこはイタリアの人。
なんとも情熱あふれる曲として残されていました。
さて、最後の小ネタです。
マルトゥッチの作品は「マーラーが指揮した最後の演奏会の演目」としても知られています。
マルトゥッチ /ピアノ協奏曲第2番
ブラームスっぽい作品、と言われますが、ブラームスはこんなにメロディーは書けないような気もします。
でも何も言われずに聞いたらドイツの作曲家の印象がある作品ではないでしょうか。
さて、その「マーラーの最後の演奏会」は1911/2/21、カーネギーでのニューヨークフィルの演奏会でした。
プログラム
Sinigaglia / Le baruffe chiozzotte, Op. 32
Mendelssohn / Symphony No. 4 in A major, Op. 90, Italian
Martucci / Piano Concerto No. 2 in B-flat minor, Op. 66
Busoni / Berceuse élégiaque, Op. 42
Bossi / Intermezzi Goldoniani, Op. 127
いずれもイタリアの作曲家です。
マーラーはマルトゥッチの作品をたびたび取り上げていたとも言われていますが、果たしてこのプログラムは「単なるイタリア特集」だったのか、マーラーのなんらかの意図が込められていたのか・・・ご存知の方はぜひぜひご教示ください。