そして、弦楽四重奏曲を書き始めた以後は、弦楽三重奏曲1曲も書かれていない。
つまり弦楽三重奏曲は、彼にとっては弦楽四重奏曲への道程たるに過ぎなかった。
しかしこの曲はピアノとチェロのためのソナタ(Op.64)に編曲されており、弦楽三重奏曲の中でも彼にとって会心の作品だったようだ。
この作品の作曲年代については正確な記録はないが、1796年にウィーンのアルタリア社から出版されているので、この頃の作品と思われる。ハイドンの許で作曲のレッスンを受けていた頃である。
この曲の構成は6楽章からなっており、当時のディベルティメントの形である。
作風からいえばモーツァルトの影響が認められる全体的にすっきりとした印象。
今回はこの中から抜粋して、第1,2,3,6楽章をお届けする。
Ⅰ. Allegro con brio
Ⅱ. Andante
Ⅲ. Menuetto. Allegretto
Ⅳ. Adagio
Ⅴ. Menuetto. Moderato