「ベートーヴェンの交響曲で最も人気のあるのは何番か?」、と問われれば、3,5,7,9番のいずれかがおそらくは該当しそうなものである。ちょっと通な?人は1番とか4番とか6番とか。意外と隠れた人気があり、プロの演奏会でもちょくちょく目にするのは2番であろうか。
・・・そう、8番はマイナーである。
立場としては3番と5番に挟まれた4番と同じように、出来のいい兄の7番、出世しすぎた9番に遠慮する次男坊の悲哀が漂っている。
Wikipediaにも「ベートーヴェンはこの第8番を結構気に入っていたのだが、聴衆からはあまりよい反応が得られず、現代でも相対的に人気は今ひとつ
である。」などと書かれてしまっている。
人気のなさに拍車をかけるのは構成的に「1番、2番、4番のような小品」なのか、「偉大なる大作」なのかがはっきりしないとことではないだろうか。前者として、古典的な交響曲として考えるにはその表情はあまりに豊かであり、後者として分類するにはいささかシンプルである。
我が尊敬するギュンター・ヴァントの演奏でさえ幾分その迷いというか、彼の手兵である北ドイツ放送響の中でも結論としてどちらであるのか、その解釈
は定かではない。快活に曲が進む時もあれば、停滞とまではいかないが、出だしの勢いが失われているように感じられることがしばしある。もちろんrit.の
指示が書かれていれば別ではあるが、同じフレーズを繰り返しつつ盛り上がるところなどは力尽きている感があったりする。
・・・確かに刻みの疲れる曲ではありますが(==)
そんな8番であるが、第2楽章はやはりキモである。
かの朝比奈氏もその著書の中で「音楽の歴史上、こんなシンフォニー楽章は二つとないでしょうな」と書いているが、メトロノームのカノン云々の真相は別とし
て、そんなエピソードがついてくるのもこの楽章の魅力故だろうか。以前某音楽評論家の指揮で演奏したときには、「ベートーヴェンが湯治に行く際に乗った馬
車の音」ともいわれたが、それもおもしろい話だ。