難産ながら大成功を収めた第1番の発表の翌年、初めて訪れた避暑地ペルチャッハの湖畔をたいへん気に入り、そこで6月に着手し、わずか4か月後に書き上げたのが第2番である本作です。
ブラームスの田園交響曲とも呼ばれ、なるほど穏やかで美しい風光を反映したような温和な喜ばしい気分に富んでおり、第1番の「苦悩から勝利へ」といった劇的で重い雰囲気と対照的。
ブラームスの第1・第2交響曲は、ベートーヴェンの第5・第6…「運命・田園」の関係とも比されます。
第1楽章の冒頭に、基本モチーフ「レ-ド#-レ」が低弦で現され、楽曲全体に何度となく登場します。
この1小節間でのモチーフ直後からのホルンの第1テーマが、なんとも伸びやかで牧歌的。
徐々に雄大に展開したのちスタッカートの軽く弾む経過句を経て、チェロを中心に渋く歌い上げる第2テーマも美しく迫ります。
胸に一抹の切なさも感じさせる、魅力的な景色と心象風景をも見せてくれる楽章です。
第2楽章は、ロ長調ながらも内省的で物寂しい響きのあるテーマ(ブラームス自身が、自分の生涯でいちばん美しい旋律だと語っているそうです)がチェロで出され、幻想的な雰囲気のなか中間部では少し楽しげに軽やかな足取りになります。
個人的にブラームスの緩徐楽章には「月夜のおさんぽ」という呼び名が似合うものが多いと思っているのですが、曲により一人の散歩なのか二人なのかイメージが膨らむところです。
この楽章もまた、月夜が似合いますが…一人で薄明りを踏んで散歩しながら、もう一人を幻影で見ているようではないでしょうか。
第3楽章はメヌエットとスケルツォが変則的に融合したような、材料となるロココ風の愛らしいテーマが変化を見せていくさまも楽しいものとなっています。
朝靄の中からモヤッと始まるような第4楽章は、すぐに明るい陽射しを伴って楽しく、ときに喜びが爆発するような熱を放ちながら進みます。
第1、第2主題とも巧みに基本モチーフが使われ、トランクィロもまた それに基づく3連符で呼応されます。
再現部を経てコーダは金管楽器が華やかに歓喜を盛り上げて走り抜けます。
現在のペルチャッハ(from Wikipedia)
南オーストリアにあり、日本でいうと摩周湖ぐらいの広さの湖。ブラームスが滞在した家は現在はペンションとして営業されているとのことだが、現地ではそれほど観光名所というほどではないようだ。