モーツァルトは管楽器の為の協奏曲を数多く残しています。
代表的なのはやはりクラリネットの為の協奏曲(K.622)でアマチュアでも演奏機会の多い曲です。ホルン協奏曲は演奏頻度では劣るかもしれませんが、小さな編成ながらモーツァルトらしいとても魅力的な作品です。
4つのホルン協奏曲とホルン五重奏曲は友人のホルン奏者・ロイドゲープ(あるいはライトゲープ)のために作曲されています。ロイドゲープはザルツブルク宮廷楽団のホルンとヴァイオリンの奏者で、のちにウィーンに出てからは奥様の実家のチーズ屋を生業とした不思議な経歴の持ち主です。
第3番の作曲は1783年もしくは1787年、前者であれば交響曲第36番と同年、後者は第37番と第38番の間となり、いずれにせよモーツァルトの作品としては後半に位置します。
4曲の中では比較的演奏の難易度が低いと言われますが(ソリストの高齢化のため、とも)、一方で作風は宮廷のサロン音楽から純粋な演奏会レパートリーと”なろうとしている”時期の作品です。典型的なソナタ形式である第1楽章、単独でも演奏されることもある第2楽章の「ロマンス」、そして第3楽章のロンドは後期の作品に劣らない充実した楽章で、ホルンの魅力を十分に引き出しています。モーツァルトのロンド楽章はどれも素晴らしい作品で、過去に演奏したオーボエ四重奏曲(K.370)、ピアノ四重奏曲第1番(K.478)などなど、「どれも1番すばらしい」曲が残されています。
オーケストラの編成はクラリネットとファゴットを用いています。通常はクラリネットではなくオーボエが加わるのが古典的な編成ですが、クラリネット好きのモーツァルトがあえてこの曲のみクラリネットを使った理由は定かではありません。この曲では出番こそ少ないのですが、実は活躍していますのでホルンだけではなくクラリネットにも注目の作品です。