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2016/02/07

J.ブラームス/交響曲第3番 ヘ長調 Op.90

ブラームスの3番目の交響曲であるヘ長調作品90は、1883年、ブラームス50歳の年に作曲されました。この曲を作曲している間は保養のためヴィースバーデンで過ごしていましたが、他の創作には一切手を付けず、この交響曲にのみ専念していました。
ヴィースバーデンの住居はブラームスにとってことのほか気持ちのよい家であり、彼は「この素晴らしさはこんな鉄のペンでは書き表すことができない」と友人に述べています。このような気持ちも手伝い、作曲はとても順調に進んだようです。
初演は1883年12月2日、ハンス・リヒター指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によってウィーンで行われました。

第1楽章の冒頭部、F-As-Fの3つの音から始まるこの動機はこの交響曲を組み立てる上で基本となる音列であり、以後何度となく使用され、またこれが形を変えて新しい主題を生み発展していきます。
ヘ長調を中心としながらも、イ長調に転調した際のクラリネットの暖かく牧歌的な旋律、展開部のビオラやチェロの情熱的で心に訴えかけてくるかのような嬰へ短調のメロディなどの多様な表情を混え、ブラームス独自の熱情や円熟した手法を感じられる楽章となっております。

第2楽章は、ヘ長調の上属調のハ長調で書かれており、平和な牧歌風ののどかな雰囲気が印象的な楽章となっています。
今にも小鳥のさえずりや小川のせせらぎが聞こえてきそうなクラリネットやオーボエの旋律、遠い山の教会から聞こえる賛美歌のようなトロンボーンのハーモニーが静かに響き、思わず天上へ誘われるかのような感覚を抱くのではないでしょうか。

交響曲での第3楽章はメヌエットやスケルツォが一般的ですが、ブラームスは間奏曲的な位置付けでこの楽章を書いています。
調性はハ短調で、冒頭部のチェロのむせび泣くような旋律が涙を誘います。
中間部は木管楽器を中心に、移ろう気分を表すかのような旋律が変イ長調で奏でられますが、また悲しみが溢れるかのようにハ短調に戻り、冒頭部の旋律が今度はホルンが奏で、オーボエに引き継がれます。

第4楽章はヘ長調ではなくへ短調を中心としており、弦楽器とファゴットによるうねるような旋律に始まり、2・3楽章では一部を除き使われていなかった金打楽器も総動員し、曲中でもっとも激しい曲調となります。時折牧歌的な部分も見せつつ、中間部では、神の声を表すとされるトロンボーンに導かれ、オーケストラの全奏により、最後の審判のような場面が訪れます。なおも激しい曲調は続きながらも、ある時一変して静かになり、ヴァイオリンが第1楽章冒頭の動機を奏で、救いをもたらすかのようなヘ長調の和音で終止します。