2019/01/31

F.C.ホミリウス / ホルン四重奏曲変ロ長調 Op.38

Yamaha Horn YHR-314II
ホルンという楽器の音は、独奏もさることながら、4人で奏でるハーモニーで真価を発揮します。
奏者も1人で吹くよりもアンサンブルの方が大好き(?)。
練習の合間に集まっては楽譜を持ち寄って、即席アンサンブルをする場面も珍しくありません。

そんなホルンアンサンブルの定番の一つが、このホミリウス作曲のホルン四重奏曲です。
作曲者のC.ホミリウスはドイツに生まれ、後半生には主にロシアで活動したホルン奏者です。
晩年にはサンクトペテルブルグ音楽院で教鞭をとり、後進を育てました。
彼の残したホルン四重奏曲は、ホルン奏者にとってはどのパートも演奏しやすく、そして音楽的にも充実した楽譜となっており、ホルンのこと、そしてその奏者のことを知りつくした人物が書いたにふさわしい作品です。

ホルン奏者以外にはなかなか知られていない作品ですが、演奏会の幕開け、どうか楽しんで聴いて頂ければ幸いです。

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2019/01/30

B.マルティヌー / 調理場のレビュー H.161

ボフスラス・マルティヌー(1890.12.8 - 1959.8.28)はチェコ出身でパリやアメリカで活躍した作曲家です。
本作は、1927年に作曲されたバレー音楽で、この組曲は作曲者自身がアレンジしました。 

この時代のマルティヌーはパリでフランス6人組(デュレ、オネゲル、ミヨー、タイユフェール、プーランク、オーリック)に刺激を受け作風も大きな影響を受けたといわれてます。

曲のタイトルの「調理場のレビュー」とうのも、なんとも楽し気なタイトルで、このバレエに登場するのは、人物ではなく、調理場の料理用具たちとなっています。
編成も他には見られない作品で、トランペットにとっては数少ない室内楽作品です(トランペットの使い方は、サンサーンスの7重奏の影響も感じさせます) 。
曲はI.Prologue、II.Tango、III.Charleston、IV.Finalの4楽章からなってます。

20世紀前半の新古典主義の香りを感じ取っていただければ幸いです。

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W.A.モーツァルト / セレナード第12番 ハ短調 K.388 (384a) 『ナハトムジーク』

モーツァルト唯一の短調セレナードである第12番「ナハトムジーク」は、自筆稿や父親に宛てたいくつかの手紙によると1782年に書かれたものだと言われています。
またバロック時代に意外に多く作られていた短調の音楽に刺激と影響を受け、それ以来モーツァルト自身も短調作品を多く書くようになったという、いわば作曲家人生のターニングポイント的な作品でもあります。 

4つの楽章で構成されているこの曲は、1楽章→疾走感のあるソナタ形式 2楽章→美しい旋律の緩徐楽章 3楽章→カノンのメヌエット 4楽章→主題を伴う変奏曲形式 という、まるでひとつの交響曲といってもおかしくない構成ですが、あくまでもこちらは“セレナード”、サロンでの夜会で聴かせるような曲ですのでモーツァルト特有の軽やかさ溢れる音楽となっています。 

しかし、冒頭のハ短調の悲愴的な和音(まるで某作曲家のソナタの冒頭のような…)には、さぞかし当時の聴衆も動揺したのではないでしょうか。
ただご安心を、すぐにモーツァルトらしい前向きでコミカルな音楽が繰り広げられます。どうぞ、夜会に参加した気持ちでお聴きください。

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2019/01/29

W.A.モーツァルト / ファゴット協奏曲 変ロ長調 K. 191 (186e)

Edgar Degas - The Orchestra at the Opera - Google Art Project 2クラシックのジャンルは交響曲、管弦楽曲、歌劇、バレエ、室内楽などがあり、「協奏曲」も多くの作品が残されている。

花形といえばやはりバイオリン協奏曲で、ベートーヴェン・ブラームス・チャイコフスキー、それにメンデルスゾーンを加えた四大協奏曲やヴィヴァルディの「四季」などは毎日世界中で演奏されている曲目だろう。
続くのはピアノ協奏曲なのだが、そのほかの楽器となるとぐっと作品数を減らし、演奏機会も少なくなる。コントラバスやチューバ、ティンパニなどは数えるほどだ。

隠れた名作は多いのだろうが、アマチュアオーケストラの選曲ではやはり「定番」に集中してしまうことになり、必然マイナーな曲はなかなか演奏機会がないということになる。

ファゴットはオーケストラでも独特の音色で多くのソロパートを受け持つ楽器だ。
低音楽器のイメージがあるが音域が広く、多様な音楽を担当することができ、「ファゴットの活躍する曲」の好みで長く語らうことができるだろう(個人的にはデュカスの「魔法使いの弟子」をおすすめ)。

協奏曲は作品数ではヴィヴァルディが30曲以上残しているのだが、ファゴット協奏曲と言えばやはりモーツァルトだ(異論あり)。

モーツァルトは比較的多くの楽器の協奏曲を残し、ファゴット協奏曲も1曲残している(他にもあったようだが譜面は失われ、「オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットと管弦楽のための協奏交響曲」という作品もあるがこちらは偽作とされる)。

作品番号であるケッヘル番号が100番台であることから分かる通り若いころの作品で、ザルツブルク時代に18歳で作曲されている。
同時期の作品ではソプラノと管弦楽のための作品である「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」K.165、映画「アマデウス」で使われた交響曲第25番K.183、番号は前後するがヴァイオリン協奏曲第3番K.216・第5番「トルコ風」K.219などが作曲されている。

曲は約20分弱で、ファゴットのひょうきんなキャラクターを表すかのような主題の1楽章(ハトポッポの曲、などと呼んだりもする)に始まる。キャラクターと明るいメロディー、技巧的なパッセージと様々な魅力を引き出す楽章だ。
第2楽章はモーツァルトらしいロマンス。明るいイメージ第1楽章から、月の夜、男女の出会い、そんなイメージが届く音楽に代わる。オーケストラのヴァイオリンやオーボエとのかけあいが物語性を強調していく。
終楽章はメヌエットのロンド楽章。
一転して小さな宮廷の舞踏会のような世界に移る。1楽章の明るさ、2楽章のロマンスとの対比はモーツァルトならでは。
モーツァルトのロンド楽章はどうしてどの曲も名曲なのかとため息ばかりがでる。

ちなみにこの作品は同じく低音楽器であるチェロで演奏する試みは古今行われていたようだが、モーツァルトがあまりにファゴットの魅力を引き出したため悉く失敗したようで、アルフレート・アインシュタインからは「ファゴットのための純正なコンチェルト」との言葉が残されている。

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室内楽演奏会vol11

2019/01/28

D.ミヨー / パストラーレ Op.147

Darius Milhaud 1923第一次世界大戦後のパリで活躍した、反ドビュッシー主義的性格をもつ「6人組」。
プーランク、オネゲルらと6人でミヨーのアパートに入り浸ってはバカ騒ぎする「年齢、友情、活動」の結びつきでの仲良しの集まりで、実は音楽的論議を戦わせるようなギラギラした場ではなく、6人といっても誰でもよかったらしいという話もあります(「ここにイベールの名があったって全くおかしくなかった」ミヨー談)。
ミヨー43歳での本作は、トリオ・ダンシュ(オーボエ、クラリネット、ファゴットによる、リード楽器のみでの三重奏)のために書かれました。
時は1935年、作品番号は147番…稀にみる多作家にして生涯なんと443作品を残しています。

マルセイユ生まれ・プロヴァンス育ちのユダヤ人。
ブラジルと米国で過ごした時期もあり、ラテンやジャズも積極的に取り込んでいます。
カラリと明るい陽光のような豊富な旋律が持ち味、更にそれらをいくつも同時に固有の調整で進行させつつ重ねる妙技(いわゆる多調性、複調性)の和声的効果が印象的です。
ハーブ薫る南仏の田園風景、葦の三重奏をお楽しみください。

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2019/01/23

L.v.ベートーヴェン / 弦楽三重奏曲第1番 変ホ長調 Op.3

ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven,1770-1827)が弦楽四重奏曲を書き始める前に、彼は5曲の弦楽三重奏曲を作曲している。
そして、弦楽四重奏曲を書き始めた以後は、弦楽三重奏曲1曲も書かれていない。

つまり弦楽三重奏曲は、彼にとっては弦楽四重奏曲への道程たるに過ぎなかった。
しかしこの曲はピアノとチェロのためのソナタ(Op.64)に編曲されており、弦楽三重奏曲の中でも彼にとって会心の作品だったようだ。

この作品の作曲年代については正確な記録はないが、1796年にウィーンのアルタリア社から出版されているので、この頃の作品と思われる。ハイドンの許で作曲のレッスンを受けていた頃である。

この曲の構成は6楽章からなっており、当時のディベルティメントの形である。
作風からいえばモーツァルトの影響が認められる全体的にすっきりとした印象。

今回はこの中から抜粋して、第1,2,3,6楽章をお届けする。

Ⅰ. Allegro con brio
Ⅱ. Andante
Ⅲ. Menuetto. Allegretto
Ⅳ. Adagio
Ⅴ. Menuetto. Moderato
Ⅵ. Finale. Allegro

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J.ブラームス / クラリネット五重奏曲 ロ短調 Op.115

1890年秋、57歳を迎えたブラームスは既に勲章や故郷ハンブルク名誉市民の称号を贈られるなど、栄光の頂点に立ち、名声も不動のものとなっていた。
しかし、保養地イシュルで遺言書を作成するなど自身の身辺整理や創作活動からの引退を考えていた。 この時、ブラームスは友人にこう書き送っている。

「私は、もう年をとりすぎたと思うし、精力的にはなにも書かないと決心した。 私は、自分の生涯が十分に勤勉なもので、達成されたと思ったし、人に迷惑をかけない年齢となり、いまや平和を楽しむことができると考えた」[1]

翌1891年3月、マイニンゲンを訪れたブラームスは、宮廷楽団のクラリネット奏者であるリヒャルト・ミュールフェルトと出会う。
彼の演奏するモーツァルトの「クラリネット五重奏曲」、ウェーバーの「クラリネット協奏曲」に感銘を受けたブラームスはクラリネットのために「三重奏曲 Op.114」、「五重奏曲 Op.115」と二曲の「クラリネットソナタ Op.120」を書き残した。 特に「クラリネット五重曲 Op.115」は晩年屈指の名作で、室内楽の代表作として知られている。

第1楽章 Allegro ソナタ形式
冒頭、両ヴァイオリンによって3拍子・ニ長調を思わせる動機が提示されるが、すぐに6拍子・ロ短調をクラリネットの登場で決定的なものとする。
チェロが哀愁に満ちた第1主題を奏で、ヴァイオリンが引き継いだのち全員の強奏で副次主題を迎える。その後、クラリネットによる第2主題に引き継がれる。 冒頭の動機や副次主題を変化させた展開部を迎え、冒頭の動機を引き継いだ再現部に至る。熱狂的なコーダを迎えたのち、最後は静かにクラリネットが第1主題を奏でて終える。

第2楽章 Adagio 三部形式
クラリネットがどこか愛情と悲しみ満ちた奥深い旋律を奏で、弦楽器がそれを支え展開していく。中間部はハンガリーのロマ音楽による影響を強く思わせる。
クラリネットによるアリアが繰り返され、ブラームス自身の独白を思わせる。第1部を思わせる再現部から静かに最後を迎えるが、冒頭とはやや異なっている。

第3楽章 Andantino - Presto non asai, ma con sentimento - Andantino
後述するように意識したであろうモーツァルトの作品ではメヌエットが置かれたが、ブラームスはあえて取り入れた素早いプレスト部を含み、 変奏曲である第4楽章との対比を明確なものにしている。

第4楽章 Con moto 変奏曲形式
主題、5つの変奏、コーダからなる。哀愁に満ちた美しい主題が歌われたのち、既に原型を見出すことが難しい第1変奏をチェロが示す。
第2変奏ではさらに原型から遠ざかるが、第3変奏では再び原型に近づく。第4変奏でロ長調に転調するも、ヴィオラによって主題が奏でられる第5変奏では再びロ短調に戻る。 第1楽章冒頭を思わせる動機がクラリネットにより奏でられ、コーダで両者が融合し統一をもたらす。

ブラームスは作曲するにあたって、モーツァルトの「五重奏曲 Kv.581」を意識したであろう事は、4楽章に同じく変奏曲を置いている点だけでも伺い知れる。
その一方でロマン主義的なメロディーが曲全体に溢れていたり、終楽章で第1楽章の動機が再現する構成は「弦楽四重奏曲第三番 Op.67」や「交響曲第三番 Op.90」にも見られるブラームスを特徴づけるものである。

 [1] 門馬直美著『ブラームス』大音楽家 人と作品<10> 音楽之友社

2019/01/08

L.v.B.室内管弦楽団第43回演奏会

L.v.B.室内管弦楽団第43回演奏会

2019年3月31日(日) 川口リリア 音楽ホール
13:30 開場 14:00 開演

指揮:
 苫米地 英一

独奏:
 印田千裕・印田陽介

曲目:
 R.シュトラウス / 13管楽器のためのセレナード 変ホ長調 作品7
 J.ブラームス/ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 作品102
 L.v.ベートーヴェン/交響曲第1番 ハ長調 作品21


あまり例のない2つの独奏楽器を求めるブラームスの二重協奏曲。親友ヨアヒムとの「和解の曲」と呼ばれるこの曲はブラームスらしい難解さ? が魅力的な作品。今回は印田千裕さん・陽介さんを招き、息の合ったソリストの演奏でお届け。あわせて演奏するのはベートーヴェンの交響曲第1番とR.シュトラウスの管楽セレナーデ。ドイツの人気作曲家の、普段とはちょっと違う室内オケでお楽しみください!

入場料:
 全席自由900円(前売800円)
 前売りチケットはイープラスにて取り扱い→イープラスサイトへ

お問い合わせ:
 メールでのお問い合わせ
 050-5892-6765(事務局)

会場アクセス:
 JR京浜東北線 川口駅 西口正面

※弦楽器のメンバーを募集しています→詳しくはこちら