2018/11/15

岡田 澪(フルート)

岡田 澪 Mio OKADA

9歳よりフルートを始める。
東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て、東京芸術大学音楽学部器楽科フルート専攻卒業。同大学大学院を修了。

全日本学生音楽コンクールフルート部門高校の部第2位。2016年セイジ・オザワ松本フェスティバルにて小澤征爾音楽塾に参加。第86回日本音楽コンクール作曲部門にアンサンブル・リームとして出演、コンクール委員会特別賞を受賞。

これまでに金昌国、高木綾子、斎藤和志、小池郁江、萩原貴子、竹澤栄祐、門馬曜子の各氏に師事。現在は吹奏楽部の指導や個人レッスン等で後進の指導にあたる他、室内楽、オーケストラなど幅広く活動している。

2018/09/26

L.v.B.室内管弦楽団 室内楽演奏会vol.11

2019年2月3日(日) かつしかシンフォニーヒルズ アイリスホール
12:30 開場 13:00 開演
入場無料


曲目:
 W.A.モーツァルト / セレナード第12番 ハ短調 K.388 (384a) 『ナハトムジーク』
 L.v.ベートーヴェン / 弦楽三重奏曲第1番 変ホ長調 Op.3
 D.ミヨー / パストラーレ Op.147
 J.ブラームス / クラリネット五重奏曲 ロ短調 Op.115
 F.C.ホミリウス / ホルン四重奏曲変ロ長調 Op.38
 チェロアンサンブル2019
  1.F.メンデルスゾーン-B/真夏の夜の夢よりノクターン
  2.F.シューベルト/ロザムンデよりアンダンティーノ
  3.F.シューベルト/軍隊行進曲
 B.マルティヌー / 調理場のレビュー H.161
 W.A.モーツァルト / ファゴット協奏曲 変ロ長調 K. 191 (186e)

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 メールでのお問い合わせ
 050-5892-6765(事務局)

会場アクセス:
 京成線青砥駅下車徒歩5分
  →会場アクセス(施設Webサイト)

ザ・室内楽と言えば弦楽四重奏や木管五重奏を思い浮かべ、オーケストラ以上に「お堅いクラシック」のイメージがあるかもしれません。確かにベートーヴェンやブラームス、ラヴェル、ショスタコーヴィチなどの室内楽曲は演奏するほうも聴く側も気合を入れる必要がありますが、もっとお気楽に楽しむことができる曲もたくさんあります。
毎度「盛り合わせ」でお送りする室内楽演奏会では編成も時代もバラバラなごった煮なプログラムでお楽しみください。

2018/07/30

W.A.モーツァルト/ピアノ、クラリネットとヴィオラのための三重奏曲 変ホ長調 K.498

この作品は1786年8月5日、ウィーンで作曲されました。モーツァルトは親しい友人や演奏家のために多くの作品を残しており、この「ケーゲルシュタット・トリオ」もそうした作品の一つだと考えられています。初演では、モーツァルトの友人でピアノの生徒だったジャカン家の令嬢がピアノを、モーツァルト自身がヴィオラを、クラリネットは当代随一の名手だったアントン・シュタードラーが演奏したという逸話があります。


なお、「ケーゲルシュタット・トリオ」とは広く定着した愛称ですが、モーツァルト自身が与えたものではないというのが通説です。ケーゲルシュタットとはドイツ語で、「ケーゲルン(ボウリングのようなゲーム)」を行う場所、といった意味の語で、同時期に書かれた管楽器のための作品(12の二重奏)の自筆譜に「ケーゲルンをしながら」と残っていたことから混同されたのでしょうか。しかしながら、この作品の持つ伸びやかさや遊び心を感じさせるネーミングで、言いえて妙な感じは多分にあります。編成としてかなり特殊な作品にもかかわらず演奏頻度が高いのは、曲そのものの魅力はもちろんのこと、愛称を与えられたことも、その理由の一助となっているのかもしれません。


曲は、澄みわたるような長調で紡がれるフレーズをベースに、内省的な短調のフレーズを織り交ぜた3つの楽章からなります。各パートとも随所に見せ場があり、趣向を凝らして書かれた作品だといえるでしょう。


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室内楽演奏会vol.10

2018/07/28

L.v.ベートーヴェン/木管八重奏曲 変ホ長調 Op.103

管楽器のための8重奏曲 変ホ長調 Op.103は、1792年に作曲され1793年に改定された楽曲です。
ベートーヴェンは1770年生まれなので22・3歳ごろに作ったことになり、作品番号でいえば1番あたりでもよいはずなのに何故103番なのか-それは、この曲がベートーヴェンの死後、1830年に出版されたためこのような作品番号となった-ということです。

ちなみにベートーヴェンは改訂されたのに外に出さなかったこの曲を弦楽5重奏に編曲し、1796年に「Op.4」として出版しました。弦楽5重奏という新ジャンルを開拓する実験曲のベースとしてOp.103を使用していたのです。
さらに1806年、彼のよき理解者でありよき友であったフランツ・クラインハインツが弦楽5重奏からピアノ3重奏曲に編曲し、本人がそれを承認したことでOp.63として出版されています。
まさにこの曲は一粒で三度美味しいといわんばかりですが、曲のベースは同じでも全てが別の楽曲として成立するのはさすが大作曲家!としかいいようがありません。

Op.103の編成はオーボエ・クラリネット・ファゴット・ホルンが各2本で、この編成はベートーヴェン憧れのモーツァルトの管楽セレナーデと同編成なので、何か影響を受けたに違いないでしょう。
曲想は短調楽章のない、軽やかで明るく爽やかな4つの楽章で構成されています。オーボエとクラリネットが曲を導きファゴットとホルンがそれを支える、木管楽器の温かくて柔らかい響きとバランスのとれた音楽をお届けいたします。

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室内楽演奏会vol.10

2018/07/27

G.ゴルターマン/『2つのサロン風の小品』よりレリジオーソ&J.クレンゲル/4つのチェロのための即興曲 Op.30

オーケストラや室内楽で低音セクションを担当するチェロは、古楽では肩にかけてバイオリンのように演奏されたり、床にエンドピンを指さず足に挟むスタイルから発展してきた楽器だ。
イタリア語のVioloncelloとはViolon=Viola+one(大きなヴィオラ) + cello(小さい)、つまり「小さな大きなヴィオラ」の意味になる。もともと弦楽器一般をヴィオラと呼んでおり現在のそれとは異なるのだが、当時の弦楽器の大きいものがViolone(ヴィオローネ、コントラバスの祖先)、さらにそれの小さな楽器がVioloncello、ということだろうか。
ただしヴァイオリン、ヴィオラ、チェロは「ヴァイオリン属」と呼ばれる楽器で構造的にはヴィオローネとは別のものである。

楽器としてのチェロは低音楽器でありながら倍音を利用することで高音までを出すことが可能で、音域の広さを活かして同一楽器でのアンサンブルにも取り組まれている。
近年では「1000人のチェロ・コンサート」がもっとも有名なイベントだろう。

『2つのサロン風の小品』より 1.レリジオーソ (Georg Eduard Goltermann, 1824 – 1898)
この曲は1000人のチェロコンサートで何度も取り上げられており、チェリストの間ではお馴染みの一曲です。逆に、チェリスト以外はこの曲は全く知られていません。この機会にぜひお楽しみ下さい。

即興曲 Op.30 (Julius Klengel, 1859 - 1933)
ドイツの有名(らしい)曲のメドレーで構成されていて、ゆったりとした賛美歌から始まり、最後は結婚行進曲で華やかに終わるという気ままな接続曲スタイルの作品。


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室内楽演奏会vol.10

2018/07/25

W.A.モーツァルト/ホルン五重奏曲 変ホ長調 K.407

モーツァルトはその短い生涯の中で、多くのホルンの為の楽曲を書き残しています。
4曲(断片も含めるともっと沢山!)のホルン協奏曲が特に有名で、そのほとんどは、モーツァルトの友人であったヨーゼフ・ロイトゲープ(1732-1811)の為に書かれたと言われています。
彼とモーツァルトの関係は「親友」か「悪友」か、いずれにしろ相当気の置けない間柄であったようで、ホルン協奏曲の自筆譜にはロイトゲープに当てた(下品な)からかいの言葉が書かれていたり、楽譜自体も色とりどりのインクで書かれていたり、と言ったエピソードも良く知られています。

今回演奏する「ホルン五重奏曲」も、ロイトゲープの為に残した作品の中の一つです。まるで協奏曲のように技巧的に書かれたホルンのパートが、弦楽4部(通常のカルテットとは異なり、ヴィオラ2本の編成となっており、暖かな響きがします)と対話する形式で書かれています。

個人的な話を一つ。
大学時代の恩師は、お前たちのような下手くそがこの曲に手を出すな!と口を酸っぱくして言っていました。あのゲルト・ザイフェルト(カラヤン時代のベルリン・フィルの伝説的な首席ホルン奏者)も怖がっていた曲なのだから、と。いざ練習を始めて、その忠告の意味を改めて実感している次第です。
楽譜自体はそんなに難しくないように見えるのに、それを「モーツァルトらしい」音楽に聞かせるのは素人ホルン吹きにはいかに難しいことか。。。
まだまだ技術も人生経験も足りないようです。

充実した響きを聞かせる、弦楽4部の演奏に聞き惚れつつ、ホルンの悪戦苦闘を温かい目で見守っていただければ幸いです。


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室内楽演奏会vol.10

2018/07/21

R.シューマン/ピアノ四重奏曲 変ホ長調 Op.47

もともとはピアニストを目指していたシューマンの作品では、やはりピアノが重要な位置を占めている、はずなのだが「ピアノソナタ」として作曲されたのは3曲である。有名な「トロイメライ」を含む「子供の情景」や「子供のためのアルバム」など小品を多く残しているが、モーツァルト(番号なし含む20曲)、ベートーヴェン(32曲)、シューベルト(21曲)と比べるとだいぶ少ない(ブラームスは3曲だ)。

またピアノを含む室内楽曲では2つの三重奏、四重奏と五重奏を1つずつ作曲している。
四重奏曲は未出版に終わったハ短調の曲があるが、一般に「シューマンのピアノ四重奏曲」とはこの変ホ長調を指す。

作曲されたのは「室内楽の年」と呼ばれる1842年、シューマンは32歳。
1840年にクララと結婚し、交響曲第1番を完成させ(1841年)、のちにピアノ協奏曲に転用される幻想曲や交響曲第4番のスケッチもはじめ、ピアニストから作曲家への転身を実現しつつある時期だ(1841年は「交響曲の年」とも呼ばれる)。
1842年にはピアノ五重奏曲、弦楽四重奏曲などを作曲した。

当時活動していたライプツィヒはメンデルスゾーンを中心に音楽院の創設、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の活動(1838年にはあの「ザ・グレート」を初演した)と充実した環境であったが、シューマンにとっては送り出した作品に伴う経済的な成功にはつながらず、神経衰弱の症状がではじめる。
1843年にはベルリオーズとの出会いに刺激を受け、オラトリオ「楽園とペリ」の成功、クララの父ヴィークとの和解、翌44年にはロシア旅行でクララがロシア皇帝の前で演奏するなど音楽家としての成功を収めたかに見えたが、神経疲労の症状は回復せず、やがて音楽院の職を辞し、ドレスデンへと移住を決意する。

全曲を通して幸せに満ちたピアノ四重奏曲であるが、そのわずか2年後にはそのような未来が待ち受けるとは誰も想像しなかったことだろう。

第1楽章:
ベートーヴェンの後期作品のような深い内省による主題提起に続き、快活なソナタ形式の音楽が続く。
第2楽章:
緊張感あるスタッカートの音楽、しかし中間部では優しい(しかしシューマンらしいシンコペーションに苦しむ)音楽を挟む。
第3楽章:
この曲の一番の聴きどころ、幸せに満ちたこの曲は過去の思い出や現在の幸せを各楽器が交代で奏でていく。思い浮かぶのは家族愛、クララへの愛情に満ちた家庭が思い浮かぶ。
曲の後半にはチェロが最低音のC線を1音下げる奏法も特徴的。
第4楽章:
一転して明るいフガートから始まる楽章。演奏者にとっては緊張の楽章だが、最後のコーダの華麗さはシューマンらしさに溢れた終結だ。

余談であるが、第3楽章では映画「君に読む物語」を思い出す。
この映画も家族をテーマにしたもので、結婚に反対され紆余曲折がありながらも長く夫婦として暮らした物語(それだけだとなんとも平凡な話だが)はおすすめの一作だ。

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室内楽演奏会vol.10

L.v.B.室内管弦楽団第42回演奏会

L.v.B.室内管弦楽団第42回演奏会

2018年11月23日(金・祝) 府中の森芸術劇場ウィーンホール
13:30 開場 14:00 開演

指揮:
 広井 隆

独奏:
 岡田 澪

曲目:
 J.ハイドン/交響曲第99番変ホ長調 Hob.I:99
 W.A.モーツァルト/フルート協奏曲第1番ト長調 K.313(285c)
 F.メンデルスゾーン/序曲「フィンガルの洞窟」Op.26
 L.v.ベートーヴェン/交響曲第4番変ロ長調 Op.60

入場料:
 全席自由1,000円(前売800円)
 前売りチケットはイープラスにて取り扱い
  →イープラスへ(外部サイト)

お問い合わせ:
 メールでのお問い合わせ
 050-5892-6765(事務局)

会場アクセス:
 東府中駅(新宿駅から約25分、京王八王子駅から約20分)北口下車 徒歩7分

※弦楽器のメンバーを募集しています→詳しくはこちら

2018/07/10

J.ハイドン/交響曲第45番嬰ヘ短調 Hob.I:45「告別」

「告別」、ドイツ語ではAbschiedssinfonie、直訳すれば「別れの交響曲」。
タイトルだけ聞くといささか縁起の悪い名前かもしれない。

しかしながら知る人ぞ知るこの曲は100を超えるハイドンの、そして後世の楽曲からしてもユニークな曲だ。
ハイドンのパトロンであるエステルハージ候の避暑地に楽団員とともに訪れていた。いつになく滞在が長引くと家族と離れ離れになる楽団員からの不満も高まり、そこでハイドンが趣向を凝らした、というエピソードがこの曲の背景だ(離宮が狭く楽団員は単身赴任だったようだ)。

第1楽章、嬰ヘ短調は憂い、悩み、孤独を感じさせる調性は「シュトゥルム・ウント・ドラング」、疾風怒濤の時期でもあり緊迫した音楽から始まる。特徴的なのは展開部で、全休止の後曲調が急に穏やかになる。ソナタ形式の第二主題のような位置付けだが、冒頭の緊迫した音楽からすると実に違和感がある。
この違和感こそがハイドンの”布石”ではないかと思ってしまうところだ。

第2楽章は陽気なイ長調で作曲されているが、この曲もまたどこか違和感を感じさせる。
一見美しい音楽と、反復される動機はいつしか瞑想感、要するに眠気を感じさせながらところどころに不協和音が盛り込まれ音楽に浸ることを故意に妨げているのではないだろうか。

第3楽章は不完全燃焼した第2楽章から一転楽しげなメヌエット楽章、と思わせておきながら嬰ヘ長調、つまりシャープが6個もつけられており、大変演奏しにくい楽章だ。そしてまたもやすっきりせず不満が募っていく。

第4楽章。
ようやくここまでのハイドンの仕掛けが活きてくる。
再び決然とした音楽からはじまり、疾風怒濤の音楽が流れていく。これぞハイドンだ、とエステルハージ候も思ったことだろう(推測)。やがてやや短いものの力強い終結を迎え・・・ここから「告別」がはじまる。
曲はadagioの癒しの音楽へと変わり、そして楽団員がひとり、またひとりとステージから去っていくのである。これにはエステルハージ候も驚いたことだろう。
第3楽章までの中途半端な違和感の音楽はこの演出のためだったのかもしれない。
最後には第3楽章と同じ嬰ヘ長調へと転調し(弾きにくい!)、2人のバイオリン奏者が最後に残され、曲は終結を迎える。

観客も拍手をしたものか迷うような最後であるが、エステルハージ候は正しくこの曲の意図を汲み、翌日には帰路に着いたとされる。

余談であるが、1つ前の第44番には「悲しみ」のタイトルがつけられている。
こちらは正真正銘悲しみに満ち、ハイドンは自身の葬儀の際に演奏されることを望んだ曲である。

2018/04/14

W.A.モーツァルト/交響曲第38番 ニ長調 K.504《プラハ》

モーツァルトのオペラでも最も人気のある曲の一つ(どれも名曲だが)である「フィガロの結婚」は初演したウィーンでは芳しい評価が得られなかった。
一方で当時オーストリア領であったボヘミアのプラハでは大ヒットし、モーツァルト自身もプラハを訪れることになる。街行く人々が鼻歌でフィガロを歌っている、と父レオポルドに手紙を送っているぐらいの人気だったようだ。

このプラハ旅行の際に作曲し、初演されたのがこの交響曲第38番となる。
「フィガロ」の成功を受けて、ということもありこの曲にはフィガロの主題が取り入れられており、重厚さよりも軽妙さに溢れる曲になっている。
通常第3楽章にはメヌエットの楽章が配置されるが、この曲では3楽章構成となるがその理由ははっきりとしていないようだ。一説には他の作品からの転用をして後から追加するつもりとも言われるが、不完全であるとは言っても後期三大交響曲に並ぶ充実した作品であることに疑いの持ちようもない。

プラハへの旅行は好評で、次作「ドン・ジョバンニ」の受注を得る。
この時の話は映画化され、「プラハのモーツァルト 誘惑のマスカレード」として2017年に公開されている。もちろん演出がされているお話であるが、当時の雰囲気を楽しめるかもしれない。

プラハのモーツァルト 誘惑のマスカレード
http://eiga.com/movie/87719/ 



この曲の演奏会
第41回演奏会

2018/04/12

L.v.ベートーヴェン/序曲 ハ長調 Op.115 《命名祝日》

「命名祝日」序曲はオーストリア皇帝フランツ1世の祝日のために作曲された曲だ。
「ハプスブルク帝国」に連なり、神聖ローマ帝国最後の皇帝フランツ2世として1792年に即位し、フランス革命とナポレオンの台頭により1794年にフランス革命戦争がはじまると第一次対仏大同盟に参加する。
1804年にフランツ2世はオーストリア帝国の皇帝フランツ1世として即位するが、1805年の三帝会戦(アウステルリッツの戦い)で敗北し神聖ローマ帝国の皇位を放棄、神聖ローマ帝国は滅亡する。
しかし引き続きオーストリア皇帝としては活躍し、宰相メッテルニヒやナポレオンに嫁いだマリー・ルイーズといった人物が知られている。

同じくフランツ1世のために作曲された曲としてはハイドンの「神よ、皇帝フランツを守り給え」が知名度としては圧倒的だろう。弦楽四重奏曲「皇帝」の一曲として、また神聖ローマ帝国以降の国家として、歌詞や編曲をされながら受け継がれ現在でもドイツ国歌として歌われている(ただし法律で決まっているわけではないらしい)。

「命名祝日」は時期としては中期に属する作品であるが、後期の作品を思わせる展開と、何よりのちの「第9」で用いられる「歓喜の歌」が聴こえてくる。交響曲第8番以降スランプに苦しむベートーヴェンが何かきっかけをつかんだ作品、かもしれないと思うと演奏の機会に恵まれないこの作品が一転思わせぶりなものになる(この曲の翌年1816年ごろからがベートーヴェンの「後期」の作品と言われることが多い)。

この曲の演奏会
第41回演奏会

2018/04/03

F.メンデルスゾーン-B/交響曲第4番 イ長調 Op.90《イタリア》

その昔「ドイツ人はイタリア好き」との話を聞いた。
かつてゲルマンと呼ばれた時代にローマ帝国により文明化(と書くと失礼なのだろうか)され、のちの時代には神聖ローマ帝国が建国されたつながり、というのがあるかもしれない。

イタリア政府観光局が発表する資料(参考資料)なるものによると、イタリアを訪れる観光客の22%はドイツからやって来て、平均で5.2泊する。これは2位のアメリカ(9.6%、2.6泊)を大きく引き離す(ちなみに日本からの観光客は9位だ)。
ちなみに別資料だとイタリアは旅行先としては3位、2位はスペイン、1位はドイツ国内らしい。

さてそんなイタリアへメンデルスゾーンもまた旅行で訪れていた。
1829年バッハの「マタイ受難曲」をベルリンで復活させたメンデルスゾーンはイングランド、ウィーン、そしてイタリアへと演奏旅行にでかける。
この時に得た着想がこの交響曲へとつながっているとされるが、題名である「イタリア」は作曲家本人によるものではなく、後世つけられたものである。
由来としては4楽章に用いられている「サルタレロ」と呼ばれるダンスで、もとはナポリの宮廷で踊られていたらしい。
動画を探してみるとこんな楽しげな踊りのようだ。


速筆のメンデルスゾーンであるがこの曲の完成は旅行からしばらく時間を要する。
完成したのは約2年後のロンドン公演の際(時間をかけた、ではなく放置していたのだろうか)、「フィンガルの洞窟」と共に演奏された。

その後メンデルスゾーンは改訂版に着手したが、残念なことに未完である。
特に第1楽章は大幅な改訂が必要と考えていたようで、今のままでも魅力的な曲であるのに、これがどうなるものなのか、聴くことができないのはとてもとても残念なことである。

参考資料
イタリアにおける外国人観光事情-ローマ観光を中心として-
https://ci.nii.ac.jp/naid/110009526260/
ドイツ人に人気の旅行先TOP3
http://ja.myecom.net/german/blog/2013/10240/

2018/03/22

L.v.B.室内管弦楽団 室内楽演奏会vol.10

2018年8月4日(土) 五反田文化センター 音楽ホール
12:30 開場 13:00 開演
入場無料
 
曲目:
 G.ゴルターマン/『2つのサロン風の小品』よりレリジオーソ
 J.クレンゲル/4つのチェロのための即興曲 Op.30
 W.A.モーツァルト/ホルン五重奏曲 変ホ長調 K.407
 W.A.モーツァルト/ピアノ、クラリネットとヴィオラのための三重奏曲 変ホ長調 K.498
 L.v.ベートーヴェン/木管八重奏曲 変ホ長調 Op.103
 R.シューマン/ピアノ四重奏曲 変ホ長調 Op.47
 J.ハイドン/交響曲第45番嬰ヘ短調 Hob.I:45「告別」

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 メールでのお問い合わせ
 050-5892-6765(事務局)

会場アクセス:
 JR山手線、都営地下鉄浅草線、東急池上線「五反田駅」より徒歩約13分
 東急池上線「大崎広小路駅」より徒歩約10分
 東急目黒線「不動前駅」より徒歩約10分

 

2018/02/22

L.v.ベートーヴェン/ピアノソナタ第8番 ハ短調 作品13『悲愴』

オーケストラの人間にはベートヴェンは9つの偉大なる交響曲作曲家であり、序曲や協奏曲が重要なレパートリーだ。弦楽器にとっては16の弦楽四重奏、10のヴァイオリンソナタ、7つのピアノ三重奏曲もはずせない。

そしてピアノ。
ベートーヴェンはもともとはピアノ・ヴィルトーゾとしてデビューしたのであり、ピアノソナタは32曲にもなる。『田園』『月光』『テンペスト』『熱情』といった超有名曲と並び最も知られるのがこの『悲愴』だろう。

 『大ソナタ悲愴』("Grande Sonate pathétique") と題されたこの曲はベートーヴェンが27-28歳のころに作曲され、初期に分類される作品だ。
この曲が作曲された時にはまだ交響曲も弦楽四重奏も世に出ておらず、のちの作品のような悲劇性、闘争と勝利といった構成ではなく、「青春の哀傷感」との表現があう感情だろう。演奏家としての限界を感じ、作曲家への転身を図り、そしてベートーヴェンの生涯の苦悩となる耳の病を自覚しはじめたのもこの頃とされ、そんな感情が「悲愴」、悲しみではなく熱情や想いとして込められているようにも思える。

第1楽章:Grave - Allegro di molto e con brio
悲劇性を感じさせる導入部はGrave(重々しく)と指示されはじまる。これは100年後のチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」が類似しているとも言われる。
優しいメロディーと激しい感情の交差する序奏はやがてAllegroに転じ、焦燥感・焦りの中走り出すような音楽となる。突然中断され再びGraveの音楽があらわれ、緩急の繰り返しが緊迫感を伝えてくる。

第2楽章:Adagio cantabile
歌詞をつけて歌われるほど親しまれるこの楽章は第1楽章とは一転して穏やかな癒しの音楽。
中声部のやや低い音域から高めの音域へとメロディーが映るのはまるで想いを寄せる男女のやりとりのようにも聴こえる。
やがて中間部では三連符が緊迫感を伝え、どこか不安を暗示するような低音の響きを呼び込む。ベートーヴェンの音楽において三連符とはやはり「運命の動機」 で、耳の病を自覚し始める時期の葛藤が美しい音楽の背景にあるのかもしれない。

第3楽章:Rondo, Allegro
激情、悲劇といった感情はいくぶん収まり、どこか達観したかのような軽やかなロンド。
長調の音楽でありながらしかしどこか哀しみを堪えながらもロンドは進み、最後はハ短調の決然とした思い、運命に抗う人の意思を伝えるかのように締めくくられる。

2018/02/20

M.ウェーバー/歌劇「魔弾の射手」 Op.77より (ホルン八重奏)

魔弾の射手は、カール・マリア・フォン・ウェーバーの作曲したオペラの一つで、1650年頃のボヘミアを舞台としたドイツの民話が題材となっています。

あらすじは以下の通りです。
若き猟師マックスが森林保護官の娘である恋人アガーテと結婚するには、次の日に開かれる射撃大会でよい成績をあげることが条件でしたが、近頃スランプ気味のマックスは的を射抜くことすらできないでいました。

狩人仲間のカスパールはそこにつけ込み、打てば百発百中の魔弾を使うようそそのかします。
マックスは最初は拒絶するものの、やはり射撃大会のことが気になり、アガーテの制止も聞かず真夜中にカスパールと待ち合わせた狼の谷へ向かい悪魔に魂を売り、マックスとカスパールは7つの魔弾を手にいれます。

射撃大会当日。
魔弾の効果でマックスは見事な射撃を見せました。
領主はマックスに鳩を打つよう命じますが、魔弾にかけられた呪いのせいで、その弾はアガーテに当たってしまいます。しかし当のアガーテは無傷で、その代わりにそれた弾にあたったカスパールが絶命します。
マックスは魔弾を使用したことを正直に答え、領主は激怒し追放を告げますが、隠者が現れ1年の執行猶予を命じ過ちを許すことを諭しました。領主もその考えを容れ、正しい行いをするなら、マックスとアガーテが結婚することを認め、物語はハッピーエンドとなります。

劇中で歌われる「狩人の合唱」は、多くのホルン奏者にとってオペラの内容は知らなくともこの曲だけは知っているのではないか、というほど馴染み深い曲です。
またオペラの序曲の中でもホルンのコラールが効果的に使われています。朝の静かな森の中で、遠くから聞こえてくる祈りの合唱のような響きは、クラシックファンにとって「ホルン」と言えばまず頭に浮かぶ場面ではないでしょうか。

今回は、オペラの中から、序奏、狩人の合唱 を含む、6つの曲をベルリンフィルホルン奏者のクラウス・ヴァレンドルフ氏が抜粋・編曲した楽譜を演奏致します。

(編曲版の曲)
 1.魔弾の射手(序奏、狩人と村人の合唱)
 2.花嫁付添の乙女たちの合唱
 3.場面転換(マックスのレチタティーヴォ)
 4.アリエッタ
 5.アガーテの祈り
 6.狩人の合唱

この曲の演奏会
室内楽vol.9

2018/02/18

J.ハイドン/交響曲 第31番 ニ長調『ホルン信号』 Hob.I:31

「ホルン信号」というと、何を想像するでしょうか?

元々ホルンは「コルノ・ダ・カッチャ」とよばれ、貴族たちの狩りの最中に用いられる道具でした。鉄砲を使う本格的な狩猟を行っていたため、誤砲を防ぐべく互いに合図を送るという使い方をしていたようです。
オーストリア=ハンガリー帝国の貴族、エステルハージ家の楽長であったフランツ・ヨーゼフ・ハイドンは、通算47年間仕える間に日々の宮廷生活からヒントを得て、様々な交響曲を作曲したといわれています。
交響曲第31番 ホルン信号もその一つで、貴族たちの生活に密接するとともに楽団のホルン奏者の技巧を誇示するために書かれました。

第1楽章 Allegro
ニ長調 3/4拍子 ソナタ形式
ホルンの信号音による短い序奏の後、郵便ホルンを表す第1主題、フルートと弦の対話による第2主題で構成される。

第2楽章 Adagio
ト長調 6/8拍子
独奏ヴァイオリンによるシチリアーノ風の主題が提示され、独奏チェロも長い旋律を奏する。

第3楽章 Menuetto
ニ長調 3/4拍子
メヌエットとは舞曲の一種で、2小節で1つの単位で曲が構成される。トリオではホルンとオーボエ、ヴァイオリン、フルート等の音色の重なりが工夫されている。

第4楽章 Finale,Moderato molto-Presto
ニ長調 2/4拍子 変奏曲
弦楽器による主題、オーボエ(第1変奏)、独奏チェロ(第2変奏)、フルート(第3変奏)、ホルン(第4変奏)、独奏ヴァイオリン(第5変奏)、トゥッテイ(第6変奏)、独奏コントラバス(第7変奏)と続き、短い経過部が突如Prestoとなり疾走しつつ、第1楽章冒頭のホルンの序奏部が再現され堂々と終わる。


この曲の演奏会
室内楽演奏会vol.9

2018/02/13

L.v.B.室内管弦楽団第41回演奏会

L.v.B.室内管弦楽団第41回演奏会

2018年4月15日(日) 府中の森芸術劇場ウィーンホール
13:30 開場 14:00 開演

指揮:
 苫米地 英一

曲目:
 L.v.ベートーヴェン/序曲 ハ長調 Op.115 《命名祝日》
 W.A.モーツァルト/交響曲第38番 ニ長調 K.504《プラハ》
 F.メンデルスゾーン-B/交響曲第4番 イ長調 Op.90《イタリア》

入場料:
 全席自由1,000円(前売800円)
 前売りチケットはイープラスにて取り扱い→イープラスのサイトへ

お問い合わせ:
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 050-5892-6765(事務局)

会場アクセス:
 東府中駅(新宿駅から約25分、京王八王子駅から約20分)北口下車 徒歩7分


歌劇「フィガロの結婚」が人気を博したことで、モーツァルトがプラハを訪れる際に作曲した交響曲「プラハ」。最近では映画「プラハのモーツァルト」で取り上げられた時代で、ところどころにオペラの雰囲気を感じさせる作品です。
メンデルスゾーンの交響曲では「スコットランド」と並び人気のある「イタリア」はイタリア旅行を契機に作曲に着手し、サルタレロと呼ばれる舞曲が取り入れられています。
どちらの曲も標題音楽ではなく旅行をきっかけに作曲された作品であるが、そのニックネームとともに長く愛されている名曲でしょう。
序曲にはベートーヴェンの「命名祝日」。
中期の作品であるが、後の「第9」を予感させる雰囲気を持つ。
「エグモント」「レオノーレ」と比べるとあまり演奏される機会がないが、実はよい味を持つ隠れた名曲ですのでお楽しみに!

※弦楽器のメンバーを募集しています→詳しくはこちら

2018/02/01

J.ブラームス/ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 作品25

室内楽の作品を多く残しているブラームスは、ピアノと弦楽器のための作品として三重奏曲と四重奏曲を3つずつ、そして五重奏曲を残している。どの作品も演奏機会がそれなりにあるが、この四重奏曲第1番はシェーンベルクによる大管弦楽版もありよく知られている作品でもある。

室内楽曲としてピアノ四重奏曲は第二バイオリンを欠くことで当然ながら内声部の厚みが欠けているのである。例えば五重奏曲ではブラームス、シューマン、ドヴォルザーク、フォーレといった作品が人気だがどれも「弦楽四重奏+ピアノ」のしての重厚さがある。一方で四重奏曲は”ピアノと弦楽アンサンブル”としての密度が魅力的だ。
どちらが優れているものでもないが、ブラームスは弦楽のためのアンサンブル曲も三重奏・四重奏・五重奏・六重奏とあり聴き分けも楽しめる作曲家だろう。

四重奏曲第1番が作曲されたのは1855年から1861年にかけて、22歳から28歳という時期は完成まで19年かけた交響曲第1番を着手し、自殺未遂をしたシューマンの妻クララに想いを寄せ、アガーテとの婚約話があり、作曲後にはウィーンに移り住む、そんな頃だ。
初期の作品らしく気難しさよりは叙情的といういか、感傷的な場面の多い曲で、構造的な複雑さはそれほど多くはない(アマチュア音楽家を悩ますシンコペーションとか・・・)。

第1楽章はピアノに始まる「レシファソ」の4音による動機を展開させるブラームスらしいねちっこさを持つ曲だ。シェーンベルクはこの主題がとても気に入り、のちに管弦楽版への編曲を行ったとか。
続く第2楽章で「間奏曲」と題されハ短調のもの哀しい旋律を奏で、3楽章に配置された緩徐楽章は牧歌的な雰囲気を歌い上げる。
そして終楽章はジプシー風の音楽とロンド。ト短調の属性はハンガリー舞曲の第1番や第5番でも使われており、馴染みのある曲調だ。クララ・シューマンによる初演でも人気があったと伝えられている。

この曲の演奏会
室内楽演奏会vol.9

2018/01/04

L.v.B.室内管弦楽団 室内楽演奏会vol.9

2018年2月25日(日) 
かつしかシンフォニーヒルズ アイリスホール
12:30 開場 13:00 開演
入場無料
 
曲目:
J.ハイドン/バリトン三重奏曲第113番 ニ長調 Hob.XI:113(チェロ三重奏)
M.ウェーバー/歌劇「魔弾の射手」 Op.77より (ホルン八重奏)
L.v.ベートーヴェン/ピアノソナタ第8番 ハ短調 作品13『悲愴』
J.ハイドン/交響曲 第31番 ニ長調『ホルン信号』 Hob.I:31
J.ブラームス/ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 作品25 

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ブラームスの名曲と明るいハイドンの作品、そして有名な「狩人の合唱」をホルン八重奏に編曲した、充実のプログラムをご用意しました。

ブラームスのピアノ四重奏曲第1番は後にシェーンベルクにより管弦楽に編曲され、「ブラームスの第5交響曲」などと呼ばれることもある作品です。そしてモーツァルトのそれに比肩するクラリネット五重奏曲は同じくクラリネットを用いた三重奏曲と同時期に作曲され、「クラリネットが好きなブラームス」を印象付けます。

ブラームスを遡ること101年前に生まれたハイドンは交響曲と弦楽四重奏曲を数多く残しています。冒頭からホルンのファンファーレで華やかに始まる「ホルン信号」はあまり類似の作品のない工夫を凝らした作品で協奏曲のような雰囲気も持つ曲となっています。対照的にチェロ三重奏曲は室内楽らしい技巧を凝らした作品です。

ウェーバーのオペラ「魔弾の射手」は序曲が演奏されることの多い作品です。この「狩人の合唱」は親しみやすいメロディーからヴァイオリンなどの教本曲にも取り入れられていますので、どこかで耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。

※演奏者の都合によりブラームス/クラリネット五重奏曲は中止とさせていただきます。大変申し訳有りませんがご了承いただけますようお願い申しあげます。

会場アクセス:
 京成線青砥駅下車徒歩5分