2016/05/14

P.I.チャイコフスキー/ロココの主題による変奏曲 イ長調 作品33

永遠の定番とも言える不動の人気の曲がいくつかあります。
例えばベートーヴェンの「運命」、ブラームスの交響曲第1番などなど。
その一角を占めるであろうチャイコフスキーの作品群はオーケストラの一体感、特にユニゾン(各パートが同じパッセージを演奏すること)の多用による効果と、メロディーの美しさにあるでしょう。 オーケストラでは交響曲第4、5、6番、ピアノ協奏曲、バイオリン協奏曲、室内楽では弦楽四重奏曲(アンダンテ・カンタービレが特に有名です)はいずれも華やかさと美しさ、そして遠いロシアの音楽でありながらどこか懐かしさを感じる名曲達です。

そんなチャイコフスキーの作品の中で、この「ロココの主題による変奏曲」はちょっとマイナーな曲になります。
他の人気曲と比較するとオーケストラ曲としては編成が小さく、金管楽器のファンファーレなどもありません(編成にもトランペットとトロンボーンが含まれていません)。

チャイコフスキー「らしさ」のひとつが弦楽器・管楽器によるフォルテの演奏とすると、この「ロココ」ではそのような場面がなく、独奏チェロの技巧的な変奏曲が続く異色の作品かもしれません。

しかし冒頭のテーマが始まった瞬間、これはチャイコフスキーだと思わざるを得ない魅力的なメロディーと7つの変奏曲(原典版では8つ)は、決してこの曲が凡庸な作品ではないと感じさせます。

タイトルにつけられた「ロココの主題」とは過去の音楽家の作品からの引用ではなくチャイコフスキーのオリジナルのものだそうです。
「ロココ」とは美術史ではバロックの後の時代、フランスから始まった様式です。
バロック・古典主義・ロココ・新古典主義・ロマン主義などと分類されますが、音楽ではバロック音楽(バッハ)、古典音楽(ハイドン、モーツァルト)、ロマン派(ベートーヴェンより後の時代) などと分類されますが「ロココの音楽家」とはあまり呼ばないようです。
調べたところクープランやラモーの作品がロココの音楽と分類されることもあるようですが、実際のところ美術の方でもあまり明確にバロックとロココの違いはないそうです。

ロシアにおいては女帝エカテリーナ1世がサンクトペテルブルク郊外に建て、世界遺産にもなったエカテリーナ宮殿がロココの建築物です。チャイコフスキーはサンクトペテルブルクにあるアレクサンドル・ネフスキー寺院(こちらも世界遺産)に埋葬されています。特にチャイコフスキーがエカテリーナ宮殿を訪れたようなエピソードはありませんでしたが、豪華絢爛なこの宮殿をイメージした演奏してみたいと思います。