2015/07/27

J.ブラームス / 弦楽六重奏曲第1番 変ロ長調 Op.18

ブラームスは慎重で完璧主義者で意固地な性格であった、とは色々な資料から読み取れます。
室内楽の分野では(ピアノ曲や歌曲を除いても)名作を多く残した、というよりは残された作品の全てが名作ですが、交響曲と同じくベートーヴェンの作品に続くことに慎重であったブラームスは弦楽四重奏ではなく、弦楽六重奏曲からまず手がけたのでした。
 2曲の弦楽六重奏曲は比較的初期に作曲されています、と言いながらも彼が27歳の時の作品です。

この弦楽六重奏曲という編成は実は珍しく、ブラームスの2曲の他にはチャイコフスキーの「フィレンツェの思い出」、シェーンベルクの「浄夜」が有名でしょうか。
ボロディンやドヴォルザークも作品を残していますが、あまり演奏される機会はないように思います。厳密には室内楽ではないのですが、リヒャルト・シュトラウスのオペラ「カプリッチョ」の前奏曲が弦楽六重奏曲となっており、こちらの方がアマチュアでもよく演奏されています。

編成は弦楽四重奏にビオラとチェロを1本ずつ加えていますので、よく言えば厚みのある、しかしながらやや「重い」曲となるので、演奏する側としてはそのバランスを取るのがなかなか難しいところです。


この第2楽章が有名で、悲劇的な曲調が印象的です。
映画のBGMに使われたことでも知られています。

 
(ルイ・マル監督「恋人たち」)

ブラームスといえば師シューマンの愛妻クララとの恋話ですが、この映画も知ってか知らずか不倫の物語です・・・。
映画に使われたブラームスというとサガンの「ブラームスはお好き」の映画版、「さよならをもう1度」でも使われています。
こちらもまた浮気をテーマとした作品ですね。。。

そんなエピソードはともかく、曲全体はどちらかと言えば若さを感じさせながらも、この第2楽章のドラマティックで悲劇的な雰囲気が全体を引き締めているのは確かです。

個人的なおすすめですが、この曲を雨の日のドライブのBGMでよく聴いています。
特に第1楽章は(ブラームスにしては珍しいことに)若さと躍動感に溢れる曲ですので、新緑の時期の雨のイメージにとてもよく合います。
雨の日のドライブは憂鬱だな、という時にぜひぜひお試しください。

ちなみに、六重奏曲第2番では別れた恋人の未練を断ち切るために、その名前を音型に記したとの逸話があります。
堅いイメージのブラームスですが、どうも恋話に結び付けられることが多いのが羨ましい・・・もとい不思議ですね。


2015/07/04

L.テュイレ / ピアノと木管五重奏のための六重奏曲 変ロ長調 Op.6


テュイレ(Ludwig Wilhelm Andreas Maria Thuille,1861- 1907,トゥイレとも表記)は、オーストリア出身のドイツの作曲家です。45歳の若さで亡くなりましたが、楽器の取扱いに優れた技量を発揮し、室内楽曲に献身した多作な作曲家です。R.シュトラウスも若い頃に一員であった「ミュンヘン楽派」の代表者とされています。

この曲は28歳で妻のために書かれ、同年にドイツの音楽祭で初演されました。

第1楽章Allegro moderato
ソナタ形式。ホルンにより雄大な主題が始められ、他楽器からピアノに受け継がれた後、クラリネットが柔らかく第2主題を奏でます。中間部では2つの主題が時々顔を覗かせつつ、最後は一気に加速して力強く終わります。

第2楽章Larghetto
第1楽章に同じくホルンで始まり、他楽器からピアノに受け継がれ、最大の盛り上がりを迎えます。その後、木管の静かな旋律で落ち着きを取り戻し、ホルンが冒頭を再現すると、ピアノが静かに回想しつつ終わります。

第3楽章Gavotte,Andante quasi Allegretto
これまでとは打って変わり、オーボエによる軽やかな旋律で始まり、各楽器に受け継がれます。中間部はオーボエによるおどけた旋律の第2主題で祝祭的に盛り上がります。やがてピアノによる冒頭主題に戻った後、突然あっさりと終わります。

第4楽章Finare
木管の小刻みで軽快な和音に合わせ、ピアノが主題を奏でます。やがて、ホルンにより第2主題が転調を繰り返しながらしばらく演奏されると、やがて再び、冒頭主題に戻ります。その後突然の一瞬の静けさの後、一気に加速し、華やかに全曲の幕を閉じます。