2014/10/13

L.v.ベートーヴェン/六重奏曲作品81b

 ベートーヴェンの室内楽と言えばやはり弦楽四重奏です。
 音楽家にとってはバッハの平均律クラビーア曲集が旧約聖書、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲が新約聖書だ、とまで言う人もいるぐらいの存在感があり、前期・中期・後期それぞれの作品群はいずれも名曲ぞろいです。
 他には「大公」「幽霊」などピアノ三重奏曲も人気があるでしょうか。
 一方でこのヴァイオリン、ビオラ、チェロ、そして2本のホルンのための六重奏曲はその存在を知っている人も稀ではないでしょうか。活躍するホ ルン奏者にはもしかしたらそんなことはないかもしれませんが、「六重奏曲」と聞けばブラームスの弦楽六重奏曲を思い浮かべる人の方が多いかもしれません。
 作曲されたのは1795年頃です。
 作品番号では運命の作品67よりも後、「エグモント」作品84の前なのですが年代はもう少し遡り、交響曲や弦楽四重奏曲の第1番よりも前の作品です。
 同時期には有名なピアノソナタ「悲愴」が作曲され、まだ10代のベートーヴェンが駆け出しのピアノ・ヴィルトーゾ奏者として活動していた時期にあたります。
 室内楽演奏会のプログラムであるモーツァルトのオーボエ四重奏曲とほぼ構成が同じであることから分かるように、この時代のベートーヴェンはまだまだ古典音楽の枠組みをでていません。
 しかしホルンの限界に挑むかのような内容は若き楽聖の力作であったはずです。ベートーヴェンはボンで過ごしていた時代にホルン奏者のジムロック(後に楽譜の出版社として成功します)にホルンの演奏を習ったことがあるそうですからきっとその経験が生かされたことでしょう。
 ベートーヴェンは管楽器のためのソナタを1曲だけ残していますが、それもホルンのための作品です。「英雄」や交響曲第7番をはじめオーケストラでも活躍しますし、ホルンは楽聖にとって思い入れのある楽器であるようです。
 ホルン奏者に聴いてみると1stホルンはとにかく音が高いそうです。
 そして2ndホルンに至ってはバイオリンと同じ分散和音や細かいパッセージがでてきます。最初はホルンで、次はバイオリンで・・・と音色の違いなどを考えているのでしょうが、ホルンの吹けない弦楽器奏者から見ても大変なことは分かります。
 こうした演奏できないのではないか、という個所は後期の作品でも出てきますから、楽聖ベートーヴェンは若いころから妥協なき作曲に取り組んでいたのだ、ということかもしれません。